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積層複合材料の開孔引張強度を最大化する積層構成設計のための、ベイズ最適化フレームワークの構築と主観的ベイズ更新モデルを提案

2025年7月8日

  • 工学研究科

ポイント

複合材料積層板の開孔引張強度を最大化する積層構成を求めるために積層パラメータを用いた強度近似関数を構築しつつ、製造上の経験的な積層制約を満足する積層構成を求める最適設計手法を提案。

ベイズ最適化で求めた最適設計解に対して、実験により強度近似関数を更新する必要があるが、本研究では低忠実度の構造解析を用いることで高速化を実現する手法を提案。

実験で得られる強度と低忠実度解析で得られる強度は一般的に一致しない。そのギャップを設計者が定量的に推定するために、プロジェクトスケジューリングの三点見積法を応用する手法を導入した。

数値計算例を通して、提案したフレームワークおよび主観的ベイズ更新モデルの有効性を明らかにした。

概要

大阪公立大学大学院工学研究科 航空宇宙工学分野小木曽 望教授らは、経験的な積層順序制約を考慮した上で、開口部のある複合材料積層板の引張強度を最大化する積層構成を求めるために、ベイズ最適化フレームワークと、関連する主観的ベイズ更新モデルを提案しました。

本研究では、まず、ベイズ最適化の枠組みにおいて、少数の実験結果を用いて引張強度を積層パラメータ空間で近似します。その近似強度を最大化する積層構成を求めるために、遺伝子修復戦略を含む効率的な遺伝的アルゴリズムを用いて、積層制約条件を満たす最適設計解を求めます。そして、近似モデルを効率的に更新するために、追加の強度試験の代わりに忠実度の低い強度解析結果を利用する主観的ベイズ更新法を提案しました。この「主観的」とは、近似精度が損なわれないように解析結果の不確かさ範囲を、設計者の勘と経験に基づいて定量化することを意味します。そのため、プロジェクトスケジューリングに従来利用されているPERTの三点見積法を応用しました。これは、「悲観値」、「最尤値(さいゆうち)」、「楽観値」を用いて主観的な確率分布を当てはめる方法です。本研究では、数値計算例を通して、この提案手法の有効性を明らかにしました。本研究成果は、低忠実度解析の結果に対する技術者の考えを反映させる新たな最適設計法の展開への貢献が期待できます。

本研究成果は、202574日、日本航空宇宙学会英文論文集「Transactions of the Japan Society for Aeronautical and Space Sciences」にオンライン掲載されました。

掲載論文

【発表雑誌】Transactions of the Japan Society for Aeronautical and Space Sciences (Transactions of JSASS) 日本航空宇宙学会英文論文集
【論文名】Bayesian Optimization Framework and Subjective Bayesian Update Model for the Open-Hole Tensile Strength Design of Laminated Composites
【著者】 Nozomu Kogiso, Motoki Nonaka

【掲載URLhttps://doi.org/10.2322/tjsass.68.147

資金情報

本研究は、JST SIP2期 統合型材料開発システムによるマテリアル革命 (FY2018 2022)JSPS科研費 基盤A 22H00184の助成を受けて実施しました。

お問い合わせ

大阪公立大学大学院工学研究科 航空宇宙工学分野
教授 小木曽 望(こぎそ のぞむ)
Emailkogiso[at]omu.ac.jp
[at]@に変更してください。

該当するSDGs

  • SDGs04
  • SDGs09