最新の研究成果

AI×赤外線技術で牛の体温を測定 -目と鼻の温度分布を高精度に検出・解析-

2025年7月31日

  • 獣医学研究科
  • プレスリリース

概要

従来、牛の健康管理において重要な体温測定は、直腸に体温計を挿入する方法が一般的でしたが、この方法は侵襲的であり、時間の経過による体温変化を把握するのが難しいという課題がありました。近年では、赤外線サーモグラフィー技術を用いて目や鼻の周辺から体温を非接触で測定する手法も導入されていますが、この方法も依然として一時的な測定にとどまり、体温の経時的な変化を継続的に把握するのは難しいのが現状です。また、関心領域1の設定も手作業で行われているため、設定位置の違いによってデータにばらつきが生じることも課題となっています。

大阪公立大学大学院獣医学研究科のキム スー ウン助教は、赤外線サーモグラフィーと人工知能(AI)を組み合わせることで、画像から関心領域(目および鼻、特に温度変化に敏感に反応する高温領域)の位置を自動的に検出する技術を活用し、約200件の温度変化パターンを抽出しました。これらのデータをもとに類似性や一貫性を分析した結果、目および鼻の体温が高い領域(上位10%および30%)において、パターン間の類似性および一貫性が示されました。また、関心領域内での高温値の分布特性も明らかにしました。

今回の研究成果により、非接触で、従来よりも一貫性のある牛の体温変化パターンを取得することが可能となりました。この一貫性ある体温変化パターンは、多様な統計解析を可能にし、動物の健康状態やストレスをより正確に把握する手段として期待されています。

本研究成果は、7月15日に国際学術誌「BMC Veterinary Research」にオンライン掲載されました。

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図1: 人工知能によって検出された牛の目が緑のハッチングで示されている様子

赤外線カメラと人工知能を用いた「体温変化パターン」の解析は、牛の健康状態やストレスの評価に役立ち、動物ケアの向上にも貢献できると考えています。人工知能によって新たな研究の可能性が広がった今、さまざまな研究で動物福祉や社会に貢献できる研究を進めていきたいと思います。

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キム スー ウン助教

掲載誌情報

【発表雑誌】BMC Veterinary Research
【論 文 名】AI-enhanced infrared thermography for reliable detection and spatial mapping of temperature patterns in calf eyes and muzzles
【著     者】Sueun Kim, Norio Yamagishi, Shingo Ishikawa and Shinobu Tsuchiaka
【掲載URL】https://doi.org/10.1186/s12917-025-04919-1

用語解説

※1 関心領域:画像データの中で分析対象となる部分。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院獣医学研究科
助教 キム スー ウン
TEL:072-463-5150
E-mail:kim73[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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