最新の研究成果

実験室と野外環境におけるメダカの繁殖行動開始に、数時間のズレがあると判明

2025年8月7日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇実験室においてメダカのペアを赤外線カメラで24時間連続撮影し、35組の行動を解析。
◇実験室でのメダカの繁殖行動は照明点灯直後の午前8時がピークで、求愛行動は暗い時間帯から始まり午前7時~午前9時がピークであった。
◇野外観察と比較すると、実験室では繁殖行動の開始時刻が一様に3~4時間遅く、環境の違いが大きく影響していることが判明。

概要

メダカの産卵時刻は過去の実験室研究により、朝の照明点灯前後1時間に開始することが報告されてきました。しかし近年の野外観察において、メダカは深夜に繁殖行動を開始することが明らかになり、従来の知見とは矛盾する結果が示されました。

大阪公立大学大学院理学研究科の近藤 湧生特任助教、小林 優也大学院生(博士後期課程3年)、小林 龍太郎大学院生(博士前期課程2年)、安房田 智司教授の研究グループは、この科学的矛盾を解明するため、野外観察で使用したメダカと同一系統のメダカを実験室で飼育し、オスとメスのペア35組をそれぞれ24時間連続で撮影後、繁殖行動を解析しました。その結果、実験室での産卵は、照明点灯直後の午前8時頃にピークを迎え、求愛行動は照明点灯前の暗い時間帯から頻度が増え、午前7時~午前9時がピークであることが明らかになりました。本研究結果により、実験室での繁殖行動は従来の報告通りの時間帯であることが分かりました。しかし、野外観察との比較では、繁殖行動の開始時刻が一様に3~4時間遅れていることが判明しました。両実験とも同一系統のメダカを用いたため、この時間差は遺伝的要因ではなく、人工的な照明サイクルや温度などの環境条件の違いによるものであることが実証されました。

pr20250807

メダカの繁殖行動の様子。上がメス、下がオス。

本研究成果は、2025年8月7日に国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

<近藤 湧生特任助教のコメント

赤外線カメラを使った24時間の連続観察という根気のいる手法でしたが、これまで見えていなかったメダカの夜間の行動が明らかになってきました。実験室の研究と自然の観察のあいだに橋をかける、そのような研究を今後も続けていきたいです。

掲載誌情報

【発表雑誌】Scientific Reports
【論 文 名】Temporal dynamics of courtship and spawning in medaka under laboratory conditions revealed by 24 h video monitoring
【著  者】Yuki Kondo, Ryotaro Kobayashi, Yuya Kobayashi, Satoshi Awata

【掲載URL】https://doi.org/10.1038/s41598-025-11082-y

資金情報

本研究は、日本学術振興会科研費(22K20666、23H03868)、笹川科学研究助成、東京動物園協会野生生物保全基金、公益財団法人クリタ水・環境科学振興財団の支援を受けて実施されました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院理学研究科
特任助教 近藤 湧生(こんどう ゆうき)
E-mail:youkikondou[at]omu.ac.jp

教授 安房田 智司(あわた さとし)
E-mail:sa-awata[at]omu.ac.jp
TEL:06-6605-2607

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

  • SDGs04