最新の研究成果
JST創発的研究支援事業に3件の新規研究課題が採択
2025年8月14日
- 工学研究科
- 医学研究科
- 研究
2024年度 科学技術振興会 (JST) 創発的研究支援事業の新規研究課題に、医学研究科の上村 麻衣子講師、山岸 良多講師、工学研究科の弓場 英司准教授をそれぞれ研究代表とする3件の研究課題が採択されました。
創発的研究支援事業は、特定の課題や短期目標を設定せず、多様性と融合によって破壊的イノベーションにつながるシーズの創出を目指す「創発的研究」を推進するため、既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的・融合的な多様な研究を、研究者が研究に専念できる環境を確保しつつ長期的に支援します。
また、創発的研究を促進するため、個人研究者のメンタリング等を行うプログラムオフィサーの下、個人研究者の能力や発想を組み合わせる「創発の場」を設けることで、創造的・融合的な成果に結びつける取組を推進します。
研究課題名:タウオパチー進行におけるペリサイトの二面的な役割の究明
研究課題のポイント
- ペリサイトは、脳内環境の恒常性を維持する「守護者」として病態を抑制するが、タウオパチー進行期には「破壊者」として病態を促進する可能性がある。
- 本研究課題では、タウオパチーの早期と進行期でのペリサイトの機能の変化点を分子レベルで解明する。
- ペリサイトの機能変化をターゲットに、タウオパチーの進行段階に応じた新たな診断バイオマーカーや治療法開発を目指す。
医学研究科 病因診断科学 上村 麻衣子講師
アルツハイマー病などの原因となるタウオパチーでは、脳の血管を構成し脳内環境を守る細胞「ペリサイト」が、病気の進行に伴い役割を変えることが明らかになってきました。本研究では、ペリサイトが初期には病態を抑える一方、進行期には炎症性に変化して病態を悪化させる仕組みを解明します。その成果を基に、血液検査による病期判定マーカーや、病期に応じた新たな治療薬の開発を目指します。

研究課題名:転写後調節に着目したSASP全容解明とがん治療への応用
研究課題のポイント
- 細胞老化およびSASP現象による肝がん進展機構の解明
- SASP因子の産生から放出過程までの全容解明を目指す
医学研究科 病態生理学 山岸 良多講師
細胞老化は、発がんストレスに応答して細胞周期を停止させ、細胞のがん化を防ぐがん抑制機構の一つだと考えられてきました。一方で、近年、この老化細胞から様々な炎症性物質が放出されることがわかりました。この現象は『細胞老化随伴分泌現象(SASP)』と呼ばれ、がんを促進する作用を持つことが示唆されています。
そこで本研究では、このSASP現象に着目し、mRNA代謝やSASP因子の放出機構といった転写後調節の観点からその全容を解明します。そして、得られた知見をがん治療に応用することを目指します。

研究課題名:ソフトマテリアルによる三次リンパ組織形成の人工制御
研究課題のポイント
- 所望の免疫応答を誘導するリンパ組織を体内で人工的に形成させるバイオマテリアル開発に挑戦する
- 人工材料によって形成される三次リンパ組織の性状・機能を解明する
- がん、自己免疫疾患のための革新的治療・予防技術を創出する
工学研究科 物質化学生命系専攻 弓場 英司准教授
近年、がんや慢性炎症組織に形成される異所性リンパ組織(三次リンパ組織)が、予後や病態に影響を及ぼしていることが明らかになってきました。本研究では、機能性リポソームやハイドロゲルなどのソフトマテリアルを用いて、がんや自己免疫疾患に対して適切な免疫応答を誘導するための三次リンパ組織を、体内で人工的につくり分けるための技術を確立することで、難治性疾患のための革新的治療・予防技術の開発を目指します。

関連情報
2024年度新規採択課題および評価者について(JST Webサイト)
問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください
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