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ハイパーカミオカンデ計画:超巨大空洞の掘削を完了

2025年8月13日

  • 理学研究科

ポイント

◇「ハイパーカミオカンデ」において、検出器本体を設置する巨大地下空洞の掘削が2025731日に完了。
◇新検出器による実験は2028年度に開始。ニュートリノのCP対称性の破れは約3年で発見できると見込まれる。
◇宇宙になぜ物質が存在するのかという根源的な問いに答える鍵になると期待。

概要

次世代超大型水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置「ハイパーカミオカンデ」において、検出器本体を設置する巨大地下空洞の掘削が、約29か月をかけ、2025731日に完了しました。ハイパーカミオカンデ計画は、東京大学と高エネルギー加速器研究機構を中核機関とする国際共同研究プロジェクトで、20257月現在、大阪公立大学を含む世界22か国・約630名の研究者が協力して推進しています。岐阜県飛騨市の山中、地下600mに、スーパーカミオカンデの約8倍の有効体積を持つ巨大水槽と2万個以上の新型光センサーからなる次世代の素粒子観測装置ハイパーカミオカンデを建設しています(図1)。また、茨城県東海村のJ-PARCにおいては、ニュートリノビームの増強や中間検出器の建設も進められています。これらを組み合わせ、ニュートリノの精密測定や陽子崩壊の探索を通して、宇宙の進化の謎の解明や、大統一理論の検証を目指しています。

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図1 ハイパーカミオカンデ検出器の完成予想図

本計画は初年度予算の措置を受けて 20202月に正式に始動し、20215月に建設位置に向けたトンネルの掘削を開始しました。ハイパーカミオカンデの本体空洞は、直径約69mのドーム形状の天井部(高さ約21m)と、その下に続く円筒形部分(高さ約73 m)から構成され、岩盤内に掘られた人工の空洞としては世界最大級の規模を誇ります。当初の予定から約6か月遅れで、2025731日に、約33m3に及ぶ本体空洞の掘削が完了しました (2) 。これにより、ハイパーカミオカンデ建設におけるすべての掘削工程が完了し、プロジェクトは最も重要なマイルストーンの一つを達成しました。

2027年にすべての機器の取り付けを完了し、超純水の注水を経て2028年に観測を開始する予定です。大阪公立大学のグループは検出器建設に積極的に貢献すると共に、建設の進捗を管理・監督する主導的立場にもあります。現在行っているT2K実験が示唆したように、ニュートリノにCP対称性の破れがあり、その大きさが最大に近い値にあるとすれば、ハイパーカミオカンデ実験では実験開始後約3年でその発見が期待されています。それは同時に、現在の宇宙になぜ物質が存在するのかという根源的な物理的問題を解決する鍵を我々に与えてくれことになります。

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図2 ハイパーカミオカンデ空洞。直径69m、高さ94mに及ぶ
世界最大級の人口地下空洞である。 写真提供:東京大学

関連情報

東京大学プレスリリース(PDFファイル 1.4MB
https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/prwps/wp-content/uploads/HKpressJa_v1.9_nocontact_2.pdf 

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院理学研究科
山本 和弘(やまもと かずひろ)
TEL:06-6605-2647
E-mail:kazuhiro[at]omu.ac.jp

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