最新の研究成果
運動前の全身表面冷却と精神性疲労の同時負荷が、持続的な運動におけるパフォーマンスに与える影響を検証
2025年9月12日
- 研究推進機構
- 国際基幹教育機構
- プレスリリース
概要
持久性運動パフォーマンスは、長距離走や自転車競技、クロスカントリースキーなど長時間にわたって持続的に行う運動におけるパフォーマンスのことで、気温や精神状態など複数の要因によって左右されます。運動前の全身表面冷却や精神性疲労は、それぞれ違う仕組みで持久性運動パフォーマンスを低下させることがわかっていますが、同時に負荷をかけた場合にどのような影響があるのか未だ十分に解明されていませんでした。
大阪公立大学研究推進機構都市健康・スポーツ研究センターの今井 大喜准教授らは、健康な20代の若年男性9人に、10℃~15℃の水循環スーツによって全身表面を冷却した後、心理課題による精神性疲労を誘発させる試行(MS)と、対照としてドキュメント映像を視聴させる試行(CON)をそれぞれ実施させました。各試行の後には、限界に至るまで自転車漕ぎ運動をさせ、全身表面冷却と精神性疲労を同時に行った場合の持久性運動パフォーマンスへの影響について検証しました(図1)。その結果、精神性疲労試行では主観的疲労感が増加したものの、パフォーマンス自体には試行間に差はみられませんでした。しかし、個人差を考慮すると、疲労感の増加が大きい者ほどパフォーマンスが低下することが確認されました。さらに、疲労感の増加量はストレス時に心拍数や集中力を高める働きがあるノルアドレナリンの増加量と正の相関関係を示しましたが、ストレスに対処するために血糖値や不安感を高めるホルモンであるコルチゾールとは相関関係が認められませんでした。これらのことから、全身表面冷却下の精神性疲労は、個人それぞれの違いにより、パフォーマンス低下に関与し、交感神経−副腎髄質系との関与が確認されました。本研究結果は今後、冬季スポーツや寒冷地作業での効果的なコンディショニング戦略の科学的基盤に活用されることが示唆されます。
本研究成果は、2025年7月11日に国際学術誌「European Journal of Applied Physiology」にオンライン掲載されました。
図1.各試行の条件と主要評価項目
実験では、ストレス介入の前後に複数の評価項目を限られた時間内で測定する必要があり、手順を滞りなく進めるのに苦労しました。また、極端に強いストレス負荷ではなく、実際の現場でも起こりうる程度であったため、その影響が十分に現れるかどうか不安もありました。しかし、いくつかの評価項目で試行間に差を検出できたことはたいへん嬉しく、研究の意義を実感できる瞬間となりました。
今井 大喜准教授
掲載誌情報
【発表雑誌】European Journal of Applied Physiology
【論 文 名】Mental fatigue accompanied by whole‑body surface cooling is associated with the impairment of subsequent endurance exercise performance
【著 者】Daiki Imai, Ryosuke Takeda, Eriko Kawai, Kosuke Saho, Akemi Ota, Emiko Morita, Yuta Suzuki, Hisayo Yokoyama, Kazunobu Okazaki
【掲載URL】https://doi.org/10.1007/s00421-025-05895-y
資金情報
本研究は、日本学術振興会科学研究費科研費若手(B)JP17K13189、基盤(C)C20K11365、23K10590の助成を受けました。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学
都市健康・スポーツ研究センター
今井 大喜(いまい だいき)
TEL:06-6605-2946
E-mail:imai[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:橋本
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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