最新の研究成果
胸部レントゲン写真から食道運動障害を検出する高精度なAIモデルを開発
2025年9月18日
- 医学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇食道アカラシアの患者と非アカラシア患者の胸部レントゲン写真を用いて、食道アカラシアを診断するAIモデルを開発。
◇AIモデルの診断能を検証したところ、高い精度(AUC※ 0.964)を示した。
◇低侵襲なスクリーニングツールへの応用が期待。
概要
食道アカラシアは、食道の動きの異常によって食べ物や液体が食道にとどまり、胃に運ばれにくくなる疾患です。症状が軽い場合には医療機関を受診しないなど、診断までに時間を要するケースが少なくないため、発症後の経過とともに食道の拡張や蛇行のような変形が進行すると考えられています。診断にはバリウム検査や内視鏡検査などを行う必要があり、より体に負担をかけず早期に発見可能な診断方法が望まれています。
大阪公立大学大学院医学研究科消化器内科学の落合 正研究医、沢田 明也病院講師、藤原 靖弘教授、人工知能学の植田 大樹准教授、放射線診断学・IVR学の山本 晃准教授らの研究グループは、食道アカラシア患者および非アカラシア患者の胸部レントゲン写真を用いて、食道アカラシアを診断するAIモデルを開発しました。そして、テストデータセットを用いてAIモデルの診断能を検証した結果、高い精度(AUC 0.964)を示しました。本結果により、胸部レントゲン写真を用いた低侵襲なスクリーニングツールへの応用が期待されます。
本研究成果は、2025年9月18日に国際学術誌「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に掲載されました。
食道アカラシア患者の胸部レントゲン写真(左)と
AIの判断根拠を可視化した画像(右)
食道アカラシアの検査中に胸部レントゲン写真で食道の拡張や液貯留が視認できることに気づき、本研究を発想するに至りました。完成したAIモデルの診断能は非常に高く大変驚きました。日本では健康診断で胸部レントゲン写真を撮影する機会も多く、簡便かつ低侵襲に食道アカラシアをスクリーニングできる可能性があります。
(左)落合 正研究医 (右)沢田 明也病院講師
掲載誌情報
【発表雑誌】Clinical Gastroenterology and Hepatology
【論 文 名】Artificial Intelligence-Based Detection of Achalasia on Plain Chest Radiography
【著 者】Tadashi Ochiai, Daiju Ueda, Akinari Sawada, Masaki Ominami, Akira Yamamoto, Yasuhiro Fujiwara
【掲載URL】
https://www.cghjournal.org/article/S1542-3565(25)00744-X/fulltext
https://doi.org/10.1016/j.cgh.2025.08.024
用語解説
※ AUC:Area Under the Curveの略で、統計学でモデルの性能を評価するために使用される。1に近いほど性能が良いモデルである。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院医学研究科
病院講師 沢田 明也(さわだ あきなり)
TEL:06-6645-3811
E-mail:a.sawada[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs