最新の研究成果

イヌiPS細胞の新たな培地を開発 -心筋細胞へ安定して分化させることが可能に-

2025年9月25日

  • プレスリリース
  • 獣医学研究科

概要

iPS細胞は、再生医療や創薬研究で広く利用されています。近年ではイヌiPS細胞も作製され、動物医療やヒトの遺伝病研究への応用が期待されています。しかし、イヌiPS細胞を多様な細胞へ分化させるには効率が低く、細胞株ごとに分化能力にばらつきが見られる点が大きな課題となっています。特に現在の培養条件では、iPS細胞の性質が均一でなく、安定して機能的な細胞を得ることが困難でした。

大阪公立大学大学院獣医学研究科の鳩谷 晋吾教授、木村 和人研究員(兼カリフォルニア大学デービス校獣医学部研究員)、大阪大学ヒューマン・メタバース疾患研究拠点の西村 俊哉特任講師(常勤)らの国際共同研究グループは、従来のiPS細胞の培養液よりも、遺伝子発現がより均一で、細胞の性質が安定する「AR培地」を開発しました。さらにAR培地で培養したイヌiPS細胞を用いて心筋細胞への分化を試みたところ、心筋特有の遺伝子やタンパク質が発現し、規則的に拍動を繰り返す細胞集団が得られました。

本研究成果は、2025年9月18日に国際学術誌「Stem Cell Reports」のオンライン速報版に掲載されました。

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イヌのiPS細胞を安定して育て、心筋細胞へ分化できる条件を確立できたことは、獣医療とヒト医療の両方に大きな意味を持ちます。臨床応用までの道のりはまだ長いですが、病気の解明や治療法開発に役立つ成果を積み重ねていきたいと思います。

press_0925_hatoya鳩谷 晋吾教授(左)、木村 和人研究員(右)

掲載誌情報

【発表雑誌】Stem Cell Reports
【論文名】Signaling pathway-based culture condition improves differentiation potential of canine induced pluripotent stem cells
【著者】Toshiya Nishimura, Kazuto Kimura, Kyomi J. Igarashi, Kohei Shishida, Hiroko Sugisaki, Masaya Tsukamoto, Aadhavan Balakumar, Chihiro Funamoto, Masumi Hirabayashi, Amir Kol, Shingo Hatoya
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2025.102640

資金情報

本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(JSPS KAKENHI, 21H02378, 24K21916)、カリフォルニア大学デービス校 Companion Animal Health センターの助成(Grant Number 2023-60-F)を受けて実施されました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院獣医学研究科
教授 鳩谷 晋吾(はとや しんご)
TEL:072-463-5374
E-mail:hatoya[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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