最新の研究成果

-自己免疫性胃炎による胃細菌叢の変化と代謝異常を解析- 神経内分泌腫瘍の発症メカニズムの一端を明らかに

2025年9月26日

  • 医学研究科
  • プレスリリース

概要

自己免疫性胃炎(autoimmune gastritis:AIG)とは、体の免疫システムが誤って自分自身の胃粘膜を攻撃してしまうことで起こる慢性胃炎の一種です。進行すると胃に神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)という特殊な腫瘍ができやすくなります。従来は、胃の細菌叢にはヘリコバクター・ピロリ菌以外の菌は存在しないとされていましたが、解析技術の進歩により、胃にも多様な細菌が定着していることが近年明らかとなりました。しかし、AIG発症による胃細菌叢の変化と胃NET発症の関連についての詳細なメカニズムは、十分に解明されていません。

大阪公立大学大学院医学研究科消化器内科学の大谷 恒史講師らの研究グループは、AIG発症者と健常対照者の胃粘膜組織を対象に、AIGにおける胃細菌叢の変化と組織由来の代謝物の両面から解析しました。その結果、特定の組織代謝型がAIGと関連し、特定の胃細菌叢シグネチャーが、NET陽性者と強く関連していることが明らかとなりました。これにより、AIGから胃NETが発症するメカニズムの一端が、宿主の代謝異常とそれにともなう細菌叢の変化によって説明することができる可能性が示されました。

本研究成果は、2025年9月11日に国際学術誌「Journal of Gastroenterology」のオンライン速報版に掲載されました。

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これまでヘリコバクター・ピロリ胃炎の陰に隠れてあまり注目されてこなかった稀少疾患である自己免疫性胃炎に着目しました。本研究は、胃粘膜に存在する細菌叢と組織内の代謝物質の両面から解析した、Harvard大学のGeicho Nakatsu先生らとの国際共同研究による成果です。

press_0926_otani06大谷 恒史講師

掲載誌情報

【発表雑誌】Journal of Gastroenterology
【論 文 名】Development of gastric mucosa-associated microbiota in autoimmune gastritis with neuroendocrine tumors
【著  者】Koji Otani, Geicho Nakatsu, Kosuke Fujimoto, Daichi Miyaoka, Noriaki Sato, Yuji Nadatani, Yu Nishida, Hirotsugu Maruyama, Masaki Ominami, Shusei Fukunaga, Shuhei Hosomi, Fumio Tanaka, Seiya Imoto, Satoshi Uematsu, Toshio Watanabe& Yasuhiro Fujiwara
【掲載URL】https://doi.org/10.1007/s00535-025-02298-w

資金情報

本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業(課題番号:JP22K08040)の支援を受けました。

用語解説

※胃細菌叢シグネチャー:胃の粘膜や内容物に存在する微生物(細菌)の種類や構成パターンを指す言葉で、特定の疾患や生理状態と関連する特徴的な細菌構成のこと。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院医学研究科消化器内科学
講師 大谷 恒史(おおたに こうじ)
TEL:06-6645-3811
E-mail:kojiotani[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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