最新の研究成果
-ビタミンDの生体内代謝を新指標で測定- 認知機能との関係の一端を明らかに
2025年9月30日
- 生活科学研究科
- プレスリリース
概要
ビタミンDは、骨の健康維持にとどまらず認知機能や生活習慣病との関連性が注目されています。しかし、認知機能低下との関連については未だ不明な点が多く、さらなる研究が求められています。ビタミンDの栄養状態の指標は、血中25-hydroxyvitamin D[25(OH)D]濃度が一般的に用いられます。しかし、25(OH)D濃度だけでは、ビタミンDが生体内でどれだけ利用できているかを明らかにすることは困難です。
大阪公立大学大学院生活科学研究科の桒原 晶子教授らの研究グループは、ビタミンDの異化代謝物(24,25-ihydroxyvitamin D【24,25(OH)₂D】)※を測定し、24,25(OH)₂Dを25(OH)Dで割って算出される『ビタミンD利用効率(VMR)』を用いて、認知機能との関係を検討しました。その結果、男女ではビタミンDの利用効率が異なり、さらにビタミンD利用効率と認知機能の関係にも違いがあることを明らかにしました。
本研究成果は2025年9月3日に国際学術誌「Clinical Nutrition ESPEN」にオンライン公開されました。
今回用いたビタミンD利用効率の指標が、ビタミンDの疾患との関係をより明確なものとする可能性があります。まだまだ多くの検討が必要ですので、さらに研究を進めていきたいと思います。
桒原 晶子教授
用語解説
※ 異化代謝物(24,25-ihydroxyvitamin D【24,25(OH)₂D】)
異化代物とは、酵素によって分解・修飾され、不活性型や排泄型に変換された物質。
24,25-ihydroxyvitamin D【24,25(OH)₂D】は、25-hydroxyvitamin D【25(OH)D】がCYP24A1酵素によって代謝されて生成される異化代謝物。食品から摂取したビタミンDや紫外線により皮膚で合成されたビタミンDは、肝臓へ運ばれ、25(OH)Dが生成される。さらに25(OH)Dは腎臓で、活性型の1,25-dihydroxyvitamin D【1,25(OH)₂D】に転換される。血中1,25(OH)₂Dは極めて低濃度で一定に保たれており、あるレベル以上になることを回避するため、CYP24A1という酵素の働きによって、1,25(OH)2Dは、不活性型の1,24,25-trihydroxyvitamin D【1,24,25(OH)₃D】に代謝され、25(OH)Dも不活性型の24,25-dihydroxyvitamin D【24,25(OH)₂D】に代謝される(図)
掲載誌情報
【発表雑誌】Clinical Nutrition ESPEN
【論 文 名】Association between serum vitamin D metabolite levels and cognitive function in community-dwelling older adults: A cross-sectional study
【著 者】Cai Yu, Minae Ide, Taiki Sugimoto, Rei Otsuka, Koji Takahashi, Masaki Takiwaki, Kiyoshi Tanaka, Hiroaki Kanouchi, Shigeo Takenaka, Takashi Sakurai, Shumpei Niida, Akiko Kuwabara
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.clnesp.2025.08.032
資金情報等
本研究は、JSPS科研費(19K11747, 25K05823)、厚生労働科学研究費補助金 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業研究事業(24FA1022)、国立長寿医療研究センター研究開発費(25-4, 25-12)、日本電子株式会社からの支援を受けて実施しました。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院生活科学研究科
教授 桒原 晶子(くわばら あきこ)
TEL:06-6167-1363
E-mail:kuwabara.akiko[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs