最新の研究成果
-エビデンスに基づく実践(EBP)の定着へ- 看護師の職場環境や支援体制の整備が重要
2025年10月3日
- 看護学研究科
- プレスリリース
概要
病院に入院している患者の転倒・転落発生率や死亡率を低下させるためには、医療従事者に対してエビデンスに基づく実践(Evidence-Based Practice:EBP)※を推進することが重要です。看護師がEBPを実践するには、EBPに関する知識や技術の向上が不可欠ですが、加えてEBP に対する組織のサポートなど職場環境の整備も重要であることが知られています。
大阪公立大学大学院看護学研究科の古木 秀明研究員らは、看護師の EBP に関する知識・技術とEBPの実践との関係性が、組織のサポートによってどのように変化するのか、どのような要因が看護師の EBP に関する知識・技術の習得に関係しているかを検証するため、日本国内の病院に勤務する看護師を対象にアンケート調査を実施。約700人の回答結果を分析しました。その結果、EBPに関する知識・技術とEBPの実践との関係性は、EBPに対する組織のサポートが多いほど強くなり、逆にサポートが少ないほど弱くなることが明らかになりました。 さらに、修士号を有していること、 EBP教育の受講経験があること、研究の実施経験があることが EBP に関する知識・技術の高さと関連していることが示されました。
本研究成果は、2025年8月5日に国際学術誌「Japan Journal of Nursing Science」、2025年9月14日に国際学術誌「Nursing Practice Today」にオンライン公開されました。
図1:EBPに対する組織のサポートの程度別の
EBPに関する知識・技術とEBPの実践の関係性
図2:看護師のEBPに関する知識・技術と関連する要因
本研究では、EBPを推進するためには、看護師個人の能力の向上だけでなく、組織のサポートが重要であることを示しました。 今回の知見から、看護実践の質を向上させるためには、EBP教育の受講機会を確保するとともに、研究を継続的に実施できる職場環境・支援体制の整備が重要であることを広めていきたいです。
古木 秀明研究員
用語解説
※ エビデンスに基づく実践(Evidence-Based Practice:EBP): 研究によって得られた信頼性の高いエビデンスや医療者の専門知識・技術、対象者の好みや価値観を統合し、質の高い看護を実践するためのアプローチのこと。 EBPは、以下の5つのStepで実践する。
Step 1:臨床疑問の定式化、 Step 2:エビデンスの検索・入手、Step 3:エビデンスの批判的吟味、Step 4:エビデンスの看護実践への適用、Step 5:看護実践の評価
掲載誌情報
【発表雑誌】Japan Journal of Nursing Science
【論 文 名】Relationship between evidence-based practice knowledge and skills and
evidence-based practice implementation in subgroups of professional and
work environment factors among hospital nurses: A cross-sectional study
【著 者】Hideaki Furuki, Nao Sonoda, Akiko Morimoto
【掲載URL】https://doi.org/10.1111/jjns.70018
【発表雑誌】Nursing Practice Today
【論 文 名】Factors related to the knowledge and skills of evidence-based practice
among hospital nurses: A cross-sectional study
【著 者】Hideaki Furuki, Nao Sonoda, Akiko Morimoto
【掲載URL】https://doi.org/10.18502/npt.v12i4.19653
研究内容に関する問い合わせ先
【研究内容に関する問い合わせ先】
大阪公立大学大学院看護学研究科
研究員 古木 秀明(ふるき ひであき)
TEL:06-6645-9048
E-mail:s21262g[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs