最新の研究成果
硫酸基の働きで性能アップ! 狙ったレアアースを効率よく吸着する酵母を開発
2025年10月9日
- 工学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇パン酵母の細胞に硫酸基を導入した硫酸基修飾酵母(S-yeast)を作成し、金属吸着量を測定したところ、従来の吸着材料よりも高い吸着量を示した。
◇S-yeastは金属の吸着・脱離を繰り返し行うことが可能。
◇塩酸の濃度を調整することにより希土類元素(レアアース)の選択的な吸着が可能。
概要
レアアースは光ファイバーや超伝導材料などに使用されており、電子廃棄物からのリサイクルが進められています。金属回収にはさまざまな手法がありますが、環境への負荷が少なくコストの低い技術が求められています。
大阪公立大学大学院工学研究科の東 雅之教授、尾島 由紘准教授らの研究グループは、これまでに、リン酸基を付加したパン酵母(P-yeast)を用い、金属の選択的な回収に成功しています。本研究では、パン酵母に硫酸基を導入したS-yeastを作成し、銅(Cu)を用いて金属吸着量を調べたところ、過去に作成したP-yeastより約2.3倍多く吸着できることがわかりました。また、吸着したCuは塩酸によって脱離でき、脱離後のS-yeastは再度Cuを吸着することが可能です。そして、Cu以外の亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)や希土類元素についてもS-yeastはP-yeastより多く吸着することが判明しました。さらに、塩酸の濃度を調整することによりレアアースを選択的に吸着することができます。本研究結果により、環境にやさしく機能的なレアアース回収技術への応用が期待されます。
本研究成果は、国際学術誌「Environmental Research」に、2025年9月1日にオンライン掲載されました。
本研究は、当時、大学院生だった山田 こころさんと、天野 萌奈さん(博士前期課程2年)が中心となり、化学バイオ工学科の先生方の協力のもと実施され、前回開発した材料(P-yeast)より一段と優れた性能を持つ材料(S-yeast)の開発に成功しました。国内特許と、JSTの協力によりPCT出願も終えており、今後はフィールド試験などのハードルを越えて、実用化へとステップアップすることを期待しながら研究を継続していきます。
東 雅之教授
掲載誌情報
【発表雑誌】Environmental Research
【論 文 名】Excellent adsorption performance of sulfated yeast for heavy metal ions: High capacity and selectivity for rare earth elements
【著 者】Kokoro Yamada, Moena Amano, Yoshihiro Ojima, Hideki Azuma, Koichi Igarashi, Masayuki Azuma
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.envres.2025.122743
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院工学研究科
教授 東 雅之(あずま まさゆき)
TEL:06-6605-3092
E-mail:azuma[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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