最新の研究成果

~入院中の転倒・せん妄・死亡率の低下を目指して~看護師向けの新たな教育プログラムを開発

2025年11月4日

  • 看護学研究科
  • プレスリリース

概要

病院に入院している患者の死亡率や転倒・転落発生率、せん妄発生率などを低下させるためには、エビデンスに基づく実践(Evidence-Based Practice:EBP)1を推進することが重要です。そのためには、効果的なEBP教育プログラムの整備が必要不可欠ですが、従来のEBP教育プログラムには、EBPのすべてのプロセスに関する教育が含まれていないことや、厳密な方法でEBP教育プログラムの評価が行われていないという課題がありました。

大阪公立大学大学院看護学研究科の古木 秀明研究員らは、EBPのすべてのプロセスに関する教育を組み込んだ新たな教育プログラム2を開発しました。そして、日本国内の病院に勤務する看護師87人を対象に、本プログラムを実施する介入群(44人)と、実施しない対照群(43人)に分け、本プログラムの効果を無作為化比較試験3で評価しました。

その結果、介入群は対照群と比較して、介入直後および介入2ヶ月後において、EBPの知識・技術のスコアやEBPの実践のスコアが有意に高いことが示されました(図)。

この知見は、本プログラムが看護師のEBPの知識・技術の向上とEBPの実践の促進のための効果的なアプローチであり、患者の死亡率や転倒・転落発生率などの改善につながる可能性があることを示唆しています。

本研究成果は、2025年10月26日に国際学術誌「Japan Journal of Nursing Science」にオンライン公開されました。

press_furuki_1029

図:開発した教育プログラムのEBPの知識・技術、EBPの実践に対する効果

本研究では、EBPのすべてのプロセスに関する教育を組み込んだプログラムが、看護師によるEBPの推進に効果的であることを実証しました。本プログラムは、2日間(1日約7時間)で実施できるため、大学や医療機関における教育へ活用・普及できるよう取り組んでいきたいです。

press_1003_furuki03古木 秀明研究員

用語解説

※1 エビデンスに基づく実践(Evidence-Based Practice:EBP):研究によって得られた信頼性の高いエビデンスや医療者の専門知識・技術、対象者の好みや価値観を統合し、質の高い看護を実践するためのアプローチのこと。
EBP は、以下の 5 つの Step で実践する。
Step 1:臨床疑問の定式化、 Step 2:エビデンスの検索・入手、Step 3:エビデンスの批判的吟味、Step 4:エビデンスの看護実践への適用、Step 5:看護実践の評価

※2 EBPのすべてのプロセスに関する教育を組み込んだ新たな教育プログラム:病院の看護師が臨床現場で直面する課題をシナリオに、EBPのstep1~5に関する講義と演習を2日間(1日約7時間)実施するプログラム。

※3 無作為化比較試験:参加者をランダムに複数のグループに分けて介入の効果を比較する方法。教育プログラムなどの介入効果を厳密に評価することができる。

掲載誌情報

【発表雑誌】Japan Journal of Nursing Science 
【論 文 名】Development and evaluation of a clinical scenario-based education program to enhance evidence-based practice knowledge, skills, and implementation among hospital nurses: a randomized controlled trial
【著  者】Hideaki Furuki, Nao Sonoda, Akiko Morimoto 
【掲載URL】https://doi.org/10.1111/jjns.70030

研究内容に関する問い合わせ先

【研究内容に関する問い合わせ先】
大阪公立大学大学院看護学研究科 
研究員 古木 秀明(ふるき ひであき) 
TEL:06-6645-9048
E-mail:s21262g[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

  • SDGs03
  • SDGs04