最新の研究成果
脂肪由来幹細胞を用いた骨再生治療法の効果を検証 ~高齢者の脊椎圧迫骨折に新たな治療の可能性~
2025年11月5日
- 医学研究科
- プレスリリース
概要
骨粗鬆症による背骨の圧迫骨折は、高齢者に多く見られる骨折であり、慢性的な腰痛や日常生活の質の低下を引き起こす深刻な健康課題です。特に骨癒合が不十分な場合には、歩行困難や寝たきりにつながるリスクも高まります。
大阪公立大学大学院医学研究科整形外科学の澤田 雄大大学院生(博士課程4年)、高橋 真治講師、寺井 秀富教授、中村 博亮教授(研究当時、現・大阪公立大学医学部附属病院長)らの研究グループは、脂肪由来幹細胞(ADSC)を骨に分化させ、球状に培養した「ADSC骨分化スフェロイド※」と、骨の再建材料として広く使われるβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)を組み合わせた複合体を、背骨が骨折したラットに移植することで、骨再生の効果を検証しました。
その結果、複合体を移植したラットでは、骨の再生量や強度が大きく改善され、骨形成や再生に関わる遺伝子の働きも活性化されることが明らかとなりました。本研究により、ADSC骨分化スフェロイドが、脊椎圧迫骨折に対する新たな治療法の開発に繋がる可能性が示唆されました。
本研究の成果は、2025年10月28日に国際学術誌「Bone & Joint Research」にオンライン掲載されました。

上図:骨の欠損部にADSC骨分化スフェロイドと人工骨(β-TCP)を移植した直後の状態。
下図:移植から8週間後の状態。人工骨が自分の骨に置き換わり、新しい骨が再生されている様子(点線は人工骨を示す)。

ラットの背骨にドリルで穴をあけて作った圧迫骨折モデルの損傷部位に、白い球状の人工骨(β-TCP)と、青い球状の細胞のかたまり(ADSC骨分化スフェロイド)を一緒に移植したイメージ図。
痛みや寝たきりの原因にもなる高齢者の背骨の骨折に対し、脂肪由来幹細胞を用いた再生医療を活用した新しい骨粗鬆症の治療法を開発しました。簡便で効果的なこの方法は、治りにくい骨折にも対応でき、治癒を早める可能性があります。健康寿命を延ばす新たな治療法として期待されます。
澤田 雄大大学院生(左)、高橋 真治講師(右)掲載誌情報
【発表雑誌】Bone & Joint Research
【論 文 名】Development of a new treatment for osteoporotic vertebral fractures using adipose-derived stem cell spheroids
【著 者】Yuta Sawada, Shinji Takahashi, Kumi Orita, Akito Yabu, Masayoshi Iwamae, Yuki Okamura, Yuto Kobayashi, Hiroshi Taniwaki, Hiroaki Nakamura, Hidetomi Terai
【掲載URLhttps://doi.org/10.1302/2046-3758.1410.BJR-2025-0092.R1
資金情報
この研究は、日本学術振興会の「科学研究費補助金(基盤研究C)(課題番号:25K12533)」の支援を受けて行いました。
用語解説
※ スフェロイド:細胞培養の分野では、ボールのように立体的に培養された細胞のかたまりを指す。細胞同士のつながりが強くなり、働きが高まるとされ、再生医療などで注目されている。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院医学研究科整形外科学
講師 高橋 真治(たかはし しんじ)
TEL:06-6645-3851
E-mail:stakahashi[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
大学院生 澤田 雄大(さわだ ゆうた)
E-mail:y-sawada[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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