最新の研究成果
自動車や航空機の軽量化・高強度化に貢献! 金属とプラスチックが接合するメカニズムを原子レベルで解明
2025年11月10日
- 工学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇アルミニウム合金とプラスチックの接合界面において、分子動力学シミュレーション※1を活用し、金属表面の化学的構造とプラスチックの分子構造が接合強度に及ぼす影響を解明。
◇分子鎖※2の局所的な形状を定量化する新しい指標を開発。これにより、金属とプラスチックの接合部が変形した時に分子鎖のどの部分がどの程度変化するかという分子形状変化が明らかに。
◇接合強度を高めるための、最適な金属表面の化学的構造とプラスチックの分子構造の設計指針を示すことが可能に。
概要
近年、自動車や鉄道などの輸送用機器の軽量化のために、従来は金属で作られていた部品の一部をプラスチックなどに置き換えるマルチマテリアル構造※3の導入が進められており、接着剤を使用せずに金属とプラスチックを直接接合する技術が注目を集めています。しかし、その接合界面における原子レベルでの変化の観察は難しく、十分に解明されていません。
大阪公立大学大学院工学研究科機械系専攻の吉田 十義客員研究員、寺元 航希大学院生(博士前期課程2年)、桑原 卓哉講師の研究グループは、アルミニウム合金とポリアミド※4の化学的な相互作用による接合界面において、分子動力学シミュレーションを活用し、金属表面の化学的構造とプラスチックの分子構造が接合強度に及ぼす影響を解明しました。さらに、分子鎖の局所的な形状を定量化する新しい指標を開発。これにより、金属とプラスチックの接合部が変形した時に分子鎖のどの部分がどの程度変化するかという分子形状変化が明らかになりました。これらの結果は、接合強度を高めるための、最適な金属表面の化学的構造とプラスチックの分子構造の設計指針を示すことを可能にします。

本研究成果は、2025年11月10日に国際学術誌「Communications Materials」にオンライン掲載されました。
材料の界面は“埋もれている”ため直接観察ができません。分子シミュレーションは、こうした界面の視覚化を可能にする強力なツールです。今後も、実験データの裏付けに留まらず、シミュレーションから新しい現象や物質の発見を生み出していきます。

左から桑原講師、吉田客員研究員、寺元大学院生
掲載誌情報
【発表雑誌】Communications Materials
【論 文 名】Chemical Functionalities Govern Polyamide–Alumina Adhesion through Local Conformational Dynamics
【著 者】Toyoshi Yoshida, Koki Teramoto, Takuya Kuwahara
【掲載URL】
https://doi.org/10.1038/s43246-025-00977-y
https://www.nature.com/articles/s43246-025-00977-y
資金情報
本研究は、JSPS卓越研究員事業(JPMXS0320210079)、JST戦略的創造研究推進事業さきがけ(JPMJPR22A6)、JSPS科研費(25K01146)の支援により実施されました。
用語解説
※1 分子動力学シミュレーション:コンピューターを用いて古典力学のニュートン運動方程式を解くことで分子や原子の動きを再現する手法。
※2 分子鎖:多数の小さな分子の繰返し単位が長く鎖のように連結した巨大な分子の構造。
※3 マルチマテリアル構造:部材ごとに異なる材料(例:金属と樹脂)を組み合わせて用いる構造。軽量化と高強度を両立できる。
※4 ポリアミド:一般的には「ナイロン」として知られ、高い強度、耐久性、耐摩耗性、耐熱性を持つ合成樹脂。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院工学研究科
講師 桑原 卓哉(くわはら たくや)
TEL:072-247-6180
E-mail:kuwa[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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