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ゲノム編集で酵母のストレス耐性を強化! 有用化合物の生産効率が向上

2025年11月26日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇酵母Saccharomyces cerevisiaeを用いて、溶剤や保湿剤などに使用されている2,3-ブタンジオール(2,3-BDO)を生産する際、通常の酵母は高濃度の2,3-BDO環境で生産効率が低下してしまうという課題がある。

◇ゲノムDNAへの変異導入技術を用いて耐性強化を試み、高濃度2,3-BDO環境で、従来株に比べ122倍増殖する変異株を得ることに成功。

概要

環境にやさしい技術として、パン作りなどにも使用される酵母Saccharomyces cerevisiaeを用い、溶剤や保湿剤などに使用されている2,3-ブタンジオール(2,3-BDO)を生産する研究が注目されています。しかし、通常の酵母は高濃度の2,3-BDO環境では弱り、生産効率が低下してしまうという課題があります。

大阪公立大学大学院工学研究科の山田 亮祐准教授、中村 海斗氏(研究当時、大学院生)らの研究グループは、高濃度2,3-BDO環境での酵母の弱体化を克服するため、ゲノムDNAへの変異導入技術を用いて耐性強化を試みました。その結果、高濃度2,3-BDO環境で、従来株に比べ122倍増殖する変異株を得ることに成功しました。さらに遺伝子発現解析では、細胞内で重要な役割を果たす構造や仕組みに関連する遺伝子の活性化が確認され、これらが耐性獲得に関与することが示唆されました。本研究結果は、酵母のさまざまな機能強化に有効な基盤技術として、持続可能な社会の実現に貢献することが期待されます。
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本研究成果は、2025年10月16日に国際学術誌「Applied Microbiology and Biotechnology」にオンライン掲載されました。

本研究では、独自に開発した変異導入技術を適用し、2,3-BDOに対して極めて高い耐性を有する酵母株の作製に成功しました。本技術はさまざまな微生物の機能を向上させることにも役立ちます。今後、この技術をさらに発展させて、環境に優しく、持続可能な社会の実現に貢献していきたいと考えています。

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山田 亮祐准教授

掲載誌情報

【発表雑誌】Applied Microbiology and Biotechnology
【論 文 名】Construction of yeast with extremely high 2,3-butanediol tolerance by introducing point and structural mutations and partial elucidation of the mechanism of 2,3-butanediol tolerance
【著  者】Kaito Nakamura, Ryosuke Yamada, Rumi Sakaguchi, Takuya Matsumoto, Hiroyasu Ogino
【掲載URL】https://doi.org/10.1007/s00253-025-13626-8

資金情報

本研究はJST革新的GX技術創出事業(GteX)(JPMJGX23B4)の助成を受けて実施しました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
准教授 山田 亮祐(やまだ りょうすけ)
TEL:072-254-9504
E-mail:ryamada@omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

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