最新の研究成果
休日のリハビリテーションに効果 大規模解析で“現場の実感”に科学的裏付け
2025年12月3日
- 医学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇大腿骨近位部骨折※1患者約78,000人のデータから、休日のリハビリテーションと退院時の日常生活動作能力(Activities of Daily Living: ADL)※2との関連性を解析。
◇休日のリハビリテーションは、平日のみの患者群と比べて、退院時のADLが高いことを確認。
◇80歳以上の患者や入院時の動作能力が低い患者に対して、休日リハビリテーションを実施するメリットがある可能性を示唆。
概要
大腿骨近位部骨折を負った高齢者は、手術後にADLの低下を経験することが多く、回復にはリハビリテーションが重要です。先行研究では、休日にもリハビリを行うことでADLの改善が促進されることが示されていますが、人的資源の制約から全患者に提供するのは困難です。
大阪公立大学大学院医学研究科 医療統計学の備藤 翼大学院生(博士課程3年)、河合 稜太特任助教、新谷 歩教授、同研究科 整形外科学の高橋 真治講師らの研究グループは、大腿骨近位部骨折後に手術を受けた60歳以上の患者77,947人(休日リハ群(59,722人)/平日のみ群(18,225人)、平均年齢(85歳/86歳)、女性割合(76.9%/76.2%)を対象に、手術後7日以内に開始されたリハビリテーションにおいて、手術後7日以内に休日にも実施された場合の退院時のADLへの影響を、年齢や入院時のADLの違いによって比較・解析しました。その結果、休日にもリハビリテーションを受ける場合の方が退院時のADLが高いことが確認され、特に80歳以上や入院時のADLが低い患者では、休日リハビリテーションがより効果的である可能性が示されました。
本研究成果は、2025年11月22日に国際学術誌「Annals of Physical and Rehabilitation Medicine」にオンライン掲載されました。
医療現場で疑問に思っていたことを大規模なデータを用いて検証することができ、うれしく思います。今後もさまざまな解析方法を取り入れつつ、大規模なデータを用いてリハビリテーションに関する研究を継続していきたいと思います。

備藤 翼大学院生
日々の臨床現場で感じた疑問を、全国規模の医療データを用いて科学的に検証した素晴らしい成果です。これまで経験に頼ることが多かったリハビリテーションの分野に、客観的なエビデンスを示した点は大きな意義があります。こうした若手研究者の挑戦が、今後の医療の質の向上や、患者さん一人一人に寄り添ったリハビリの実現につながることを期待しています。

新谷 歩教授
掲載誌情報
【発表雑誌】Annals of Physical and Rehabilitation Medicine
【論 文 名】Association between additional non-weekday rehabilitation and discharge function after hip fracture, modified by age and admission function: a retrospective study
【著 者】Tsubasa Bito, Shinji Takahashi, Ryota Kawai, Ayumi Shintani
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.rehab.2025.102035
用語解説
※1 大腿骨近位部骨折:大腿骨の近位部(脚の付け根、股関節の一部分)で起こった骨折。
※2 日常生活動作能力(Activities of Daily Living: ADL):人が日常生活を送るために必要な基本的な身体活動の能力を指し、食事、車いすからベッドへの移乗、整容(顔を洗う、歯を磨くなど)、トイレ動作、入浴、移動、階段昇降、着替え、排尿・排便コントロールなどが含まれる。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院医学研究科
教授 新谷 歩(しんたに あゆみ)
TEL:06-6645-3894
E-mail:ayumi.shintani[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:橋本
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs