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10代が背負う介護の現実とは?心理的影響を全国調査で明らかに

2025年12月9日

  • 経済学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇ケア負担が大きいほど心理的ストレスが高い傾向があるが、達成感などポジティブな感情も併せ持つことが明らかに。
◇2024年の調査では、ポジティブ・ネガティブ両面の感情が2021年より強く表れた。
◇全体の約20%が、ポジティブな感情が低くネガティブな感情が高い「高リスク群」に該当し、支援の必要性が示唆された。

概要

日本では高齢化が進む中、家族の介護や世話を担うヤングケアラーが増加しています。しかし、彼らが感じている心の負担や感情への影響は、まだ十分に明らかになっていません。

大阪公立大学大学院経済学研究科の牛 冰教授と王 子言客員研究員の研究グループは、ヤングケアラーの心理や感情にケア負担がどのように影響するかを明らかにするため、全国の15~19歳のヤングケアラーを対象に、2021年(コロナ禍)と2024年の2回にわたってアンケート調査を実施しました。

その結果、ケア負担が大きいヤングケアラーほど高いストレスを抱える傾向がある一方で、達成感や誇りといったポジティブな感情も併せ持っていることが明らかになりました。特に、2024年の調査では、ケア経験によるポジティブ・ネガティブ両面の感情が2021年よりも強く表れました。これは、ケアの負担が続く中でも、ヤングケアラーへの理解や支援が社会に広がり、彼ら自身が自分の役割を前向きに受け止めるようになってきたことが背景にあると考えられます。また、ヤングケアラー全体の約20%が「高リスク群」に該当しました。本研究の結果から、個々の状況に応じた多面的な支援の構築が重要であることが示唆されました。

本研究成果は、2025年11月5日に国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

ヤングケアラーの心理的ストレスや感情面への影響を明らかにしたいという思いから本研究に取り組みました。コロナ禍とその後という異なる社会状況下において、彼らの心理状態の変化と、それに影響を与える要因をデータに基づいて具体的に示せたことは、大きな意義があると感じています。ヤングケアラーという存在が社会に広く認知され、彼らがより適切な支援を受けられる環境づくりに、本研究が少しでも貢献できれば幸いです。

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(左から)牛 冰教授、王 子言客員研究員

掲載誌情報

【発表雑誌】Scientific Reports
【論 文 名】Care burden and outcomes in young carers during and after the COVID‑19 pandemic: psychological distress and cognitive–emotional aspects
【著  者】Ziyan Wang & Bing Niu

【掲載URL】https://doi.org/10.1038/s41598-025-22652-5

用語解説

※ ヤングケアラー (Young Carers):「子ども・若者育成支援推進法(2024年)」の改正に基づいて、ヤングケアラーのことを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と定義されている。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院経済学研究科
牛 冰(ぎゅう ひょう)
TEL:06-6605-2738
E-mail:niubing[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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