最新の研究成果
魚は想定より早いタイミングで自己認知していた!認知後の新たな行動も発見
2025年12月11日
- 理学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇魚が鏡を見て自己認知に至るまでの時間は、従来の想定よりも劇的に短いことが明らかに。
◇魚は鏡像自己認知※1に到達した後、自分以外の対象を用いて鏡の性質を調べる行動を示した。
◇鏡の道具利用が報告されている多くの動物種で、鏡像自己認知が認められる可能性を示唆。
概要
動物に自己意識があるかを調べる代表的な方法としてマークテスト※2が広く用いられていますが、このテストに合格し自己意識があるとされる動物種は限られています。そのため、従来の研究は「どの種がマークテストに合格するか」に焦点が当てられており、自己認知に至る過程やその後の行動については十分に検討されていませんでした。
大阪公立大学大学院理学研究科の十川 俊平特別研究員と幸田 正典特任教授らの研究グループは、ホンソメワケベラに寄生虫に似せた赤茶色のマークを鏡提示前から付与し、鏡像自己認知の過程を観察しました。その結果、平均82分でマークをこすり落とそうとする行動が確認され、従来は『4~6日後に自己認識が生じる』とされていた解釈に誤りがある可能性が示されました。
さらに、自己認知に到達した後には、エビの欠片を鏡の前に持ち込み、鏡像と実物を比較するような行動が観察されました(図)。これはホンソメワケベラが自己認知に到達したあとに、鏡の性質を調べていると予想され、鏡を道具として利用している可能性を示唆するものです。
本研究は、鏡の道具利用が自己認知より先に進化したとする従来の考え方を覆し、自己意識が限られた動物だけでなく、より広い動物種に存在する可能性を示しました。

図:鏡の前にエビの欠片を持っていく様子
本研究成果は、2025年11月25日に国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。
今まで、鏡像自己認知(自己意識)は一部の動物だけが示すといわれてきました。しかし今回の発見で、より広い範囲の動物に自己意識がある可能性が示唆されました。これにより、今まで進化(遺伝子)のみで語られてきた動物の行動が、自己意識による目的に沿ったものに見直され、進化論の見直しにつながることが期待されます。

十川 俊平特別研究員
資金情報
本研究は、JSPS科研費(課題番号:24K21065, 23H03868, 20K20630, 23H03872, 24K03238)およびSchweizerischer Nationalfonds zur Förderung der Wissenschaftlichen Forschung(課題番号:310030_192673)の支援を受けて行われました。
用語解説
※1 鏡像自己認知:鏡に映る自己の反射像を見て、その反射像が自己を表すものだと認識できること。
※2 マークテスト:鏡を使わないと見えない場所(額や喉)に動物が気付かないようにマークをし、鏡を見た動物がそのマークに気が付いて触ったり取ろうとしたりするかを確認するテスト。動物が鏡を見て初めてそのマークに気が付いて触った場合、その動物が自己の鏡像を自己だとわかっている証拠となる。
掲載誌情報
【発表雑誌】Scientific Reports
【論 文 名】Rapid self-recognition ability in the cleaner fish
【著 者】Shumpei Sogawa, Taiga Kobayashi, Redouan Bshary, Will Sowersby, Satoshi Awata, Naoki Kubo, Yuta Nakai, Masanori Kohda
【掲載URL】https://doi.org/10.1038/s41598-025-25837-0
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院理学研究科
特別研究員 十川 俊平(そがわ しゅんぺい)
TEL:06-6605-2739
E-mail:a10se013[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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