最新の研究成果
~富士山測候所で高山病の原因を調査~ 脳の血流増加が頭痛を引き起こす
2025年12月11日
- 研究推進機構
- 国際基幹教育機構
- プレスリリース
ポイント
◇富士山頂で3日間、8人の男性を対象に首の動脈の血流と血管の太さを計測。
◇急性高山病(AMS)※の症状の一つである頭痛の程度と、動脈の血流・太さの変化には関連が見られた。
◇高地における脳の血流増加が頭痛の原因である可能性を示唆。
概要
高い山に登ると、多くの人が頭痛などの急性高山病(AMS)に悩まされますが、その原因の一つとされる脳の血流変化との関係はまだよく分かっていません。
大阪公立大学 都市健康・スポーツ研究センターの岡﨑 和伸教授、富士山測候所を活用する会の浅野 勝己氏(筑波大学名誉教授)、鹿屋体育大学の堀内 雅弘教授らの研究グループは、富士山頂(標高3,776m)において8人の健康な男性を対象に、首の内頸動脈と椎骨動脈の血流と血管の太さを3日間毎日計測し、高山病の症状との関係を調べました。その結果、内頸動脈は日を追うごとに血流と血管の太さが増し、特に、頭痛の程度と、動脈の血流・太さの変化には関連が見られました。これらのことから、高地における脳の血流増加が頭痛の原因となっている可能性が高いことが示唆されました。
富士山測候所
本研究成果は、2025年8月1日に国際学術誌「Journal of Applied Physiology」にオンライン掲載されました。
富士山頂での研究は天候にも左右され、測定機器の安定運用が難しく苦労しましたが、実際の高地で血流を直接測れたことは大きな成果です。高山病の原因解明を通じて、安全で快適な登山や高地滞在の実現に貢献したいと考えています。

岡﨑 和伸教授
20年前に発足した「認定NPO法人 富士山測候所を活用する会」の高所医学の研究班として、高山病の機序解明と対策に取り組んで参りました。筑波大学名誉教授として愛弟子の岡﨑教授とともに山頂滞在時の測定研究を進めてきました。このたびの国際誌への掲載は、わがNPO活動の栄冠の一つとして誇りに思っております。

浅野 勝己氏
この研究は、私の前職、山梨県富士山科学研究所勤務時代から継続して行ってきました。当時、富士山で毎年1000人近くの登山者調査を行っており、多くの高山病発症者を目の当たりにしてきました。せっかくの富士登山が苦い思い出にならないよう、エビデンスを伴った学術的貢献が少しでもできれば幸いです。

堀内 雅弘教授
掲載誌情報
【発表雑誌】Journal of Applied Physiology
【論 文 名】Effect of short-term high-altitude acclimatization on the relationship between cerebral blood flow and symptoms of mild acute mountain sickness in males
【著 者】Kazunobu Okazaki, Katsumi Asano, Masahiro Horiuchi
【掲載URL】https://doi.org/10.1152/japplphysiol.00434.2024
資金情報
本研究は、JSPS科研費(26440268、17H03741)の支援を受けて実施しました。
用語解説
※ 急性高山病(AMS):Acute Mountain Sicknessの略称。標高2,500メートル以上の高地に急に登ったときに、体が低酸素環境に十分に慣れないまま起こる症状のこと。主な症状は頭痛、吐き気、めまい、倦怠感などで、登山や高地滞在の初期にみられる。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学 都市健康・スポーツ研究センター
教授 岡﨑 和伸(おかざき かずのぶ)
TEL:06-6605-2950
E-mail:kokazaki[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs