最新の研究成果

~AIで旅をもっと楽しく~ 旅行者の多様な興味を捉える観光地推薦モデルを開発!

2025年12月18日

  • 情報学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇アニメや歴史など、旅行者の興味を捉えて次の観光地を推薦するAIモデルを開発。

◇ どの興味が推薦に影響したかを示すことで、観光地が選ばれた根拠をわかりやすく説明可能に。

◇スタンプラリーデータによる検証で、推薦の正確さを示す指標であるPrecision@5やNDCG@5などが従来モデルよりも向上。

概要

近年、文化観光では旅行者一人一人の嗜好や行動履歴に基づいた観光地推薦(POI推薦)が求められています。しかし、従来の推薦システム1は、ユーザーの過去行動を単純に時系列で処理するため、関心が短時間で変化する場合や複数の興味が同時に存在する場合には十分に対応できませんでした。

大阪公立大学大学院情報学研究科の佐賀 亮介准教授、湯 剣松(タン ケンソウ)特任助教、馬 兆其(マ チョウキ)大学院生(博士前期課程2年)らの研究グループは、『マルチスロットメモリ2』と『ダイナミックゲーティング3』を組み合わせた新しいPOI推薦モデルを開発しました。このモデルは、観光中に利用者に存在する複数の興味をそれぞれ別のスロットメモリで記憶します。そして、その時点で最も関連性の高い興味を選択する仕組みにより、利用者が次に訪れる可能性の高い観光地を『なぜその観光地が選択されたのか』という理由もあわせて推薦します。このモデルを実際に実施されたスタンプラリーのデータを用いて検証した結果、従来の推薦モデルよりも、推薦の正確さを測る指標において改善が確認されました。

本研究は、利用者にとって透明性の高い推薦を実現し、文化観光体験の質向上に寄与することが期待されます。

本研究成果は、2025年11月14日に国際学術誌「IEEE Access」にオンライン掲載されました。

日本の鉄道スタンプラリーのような小規模で個性的な観光体験にも、安心して使える推薦システムが必要だと感じ、この研究を進めました。複数の興味が同時に変化する複雑な行動を分析することは大変でしたが、本モデルが実際の利用者の動きを理由もあわせて説明できた時は、とても嬉しく感じました。今後も身近な文化と技術をつなぐ研究を続けたいです。

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馬 兆其大学院生

掲載誌情報

【発表雑誌】IEEE Access
【論 文 名】Multi-Slot Memory With Dynamic Gating: A Multi-Task Framework for Interpretable Sequential Recommendation in Niche POI Scenarios
【著   者】Zhaoqi Ma; Jiansong Tang; Ryosuke Saga

【掲載URL】 https://doi.org/10.1109/ACCESS.2025.3632668

用語解説

※1 推薦システム:利用者の過去の行動をもとに、次に好みそうな場所や商品を提案する仕組み。

※2 マルチスロットメモリ:利用者の複数の興味を分けて保存する記憶構造。一つの記憶に全てを入れるのではなく、興味ごとに別々に覚える点が特徴である。

※3 ダイナミックゲーティング:現在の行動に最も関連する記憶スロットを選ぶ仕組み。どのスロットが選ばれたかを見ることでモデルの判断理由が理解できる。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院情報学研究科
准教授 佐賀 亮介(さが りょうすけ)
E-mail:r21155g[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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