最新の研究成果
障がい者にとって“ニューノーマル”は「日常」だった―コロナ禍の生活実態―
2025年12月19日
- 現代システム科学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇コロナ禍でも障がい者の生活は大きく変わらず、ある意味、行動制限の影響は限定的であった。
◇サービス利用困難や生活の窮屈さなどの課題がある一方、移動や交流の利便性、プライバシー確保など前向きな変化も確認。
◇ニューノーマルは、障がい者が指摘してきた「日常」であることを示唆。
概要
新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、社会全体に深刻な影響を与えました。感染予防や重症化防止のための行動制限は、障がいの有無にかかわらず、人々に身体的・精神的な負担を強いました。一方で、障がいのある方々は、コロナ禍以前から日常生活においてさまざまな制約を受けており、その中で独自の工夫を重ねてきました。しかし、コロナ禍における障がい者の生活実態や経験に関する研究は、依然として十分ではありません。
大阪公立大学大学院現代システム科学研究科の田垣 正晋教授は、ある自治体における障がい者政策に関する住民会議をフィールドに、質的調査(質的研究)※を行いました。その結果、障がい者はもともと日常生活に制約があり、行動制限や「ステイホーム」の要請による影響は限定的であることが分かりました。また、サービス利用の困難や生活の窮屈さといった課題が生じる一方、人出の減少による移動のしやすさ、避難所でのプライバシー確保、オンライン交流の拡大など、ポジティブな変化も確認されました。また、コロナ禍で障がいのない人々が不便さを体験したことは、障がい者の生活を理解するきっかけとなりましたが、終息後にはその理解が薄れる可能性も指摘されています。今回の調査は、障がい者にとって「ニューノーマル」が実は日常であったことを示しました。
本研究成果は、2025年9月4日に国際学術誌「Culture & Psychology」にオンライン公開されました。
*障がい、障がいの使い分けは、学術用語や法制度における用法に準拠。
田垣教授からのコメント
私は、大学院生のときから、障がいのある方々のライフコースにおける心理社会的問題を、我が国の社会や文化、制度政策から考えています。特に障がい者同士のつながりやお互いの経験からの発見が、法制度や社会情勢の話題の中で生じています。
掲載誌情報
【発表雑誌】Culture & Psychology
【論 文 名】The meanings of COVID-19 pandemic for people with disabilities in Japan: A qualitative analysis of diverse disability narratives.
【著 者】Masakuni Tagaki
【掲載URL】https://doi.org/10.1177/1354067X251372480
用語解説
※ 質的調査(質的研究):社会調査の手法の一つ。インタビュー、観察、質問紙調査の自由記述などでえられた言語データ(質的データ)を、数量化せずに分析して、意味のまとまりや概念をつくっていく。大規模な量的調査がめざす一般化とは異なり、これまで研究されていなかったり自明とされていたりした事象に関する、新しい見方を提示する。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院現代システム科学研究科
田垣正晋(たがきまさくに)
E-mail:tagaki[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:橋本
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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