最新の研究成果

新興人獣共通感染症菌E. albertiiに関する総説論文を発表

2025年12月22日

  • 獣医学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇近年、公衆衛生上の新たな脅威として注目を集めている新興人獣共通感染症菌Escherichia albertiiに関して、その発見からこれまでの知見を収集し、総説論文として報告。

◇発見当初、別の菌と誤同定された原因と、今後、誤同定を回避する方法を提言。

◇誤同定を回避し正確な情報が集積されることで、食中毒や感染症の発症数軽減につながると期待される。

概要

新興人獣共通感染症菌Escherichia albertii(以下、E. albertii)は、1991年に下痢を発症したバングラデシュの9歳の女児から見つかり、最初に発見したAlbert博士の功績を称え、E. albertiiと名付けられました。発見から長い間、細菌の性質と保持している病原因子が似ていることから、腸管病原性大腸菌やO157に代表される腸管出血性大腸菌として誤同定されていました。E. albertiiの特異的な検出法や分離法が確立されていなかったことも誤同定の原因であると考えられます。近年、日本でもE. albertiiによる集団食中毒事例が報告されるなど、公衆衛生上の新たな脅威として注目を集め、研究が進んでいます。

大阪公立大学大学院獣医学研究科/大阪国際感染症研究センターの山﨑 伸二教授、日根野谷 淳准教授、クウェート大学のM. John Albert教授らの研究グループは、E. albertiiの疫学や細菌学的性状、遺伝学的特徴、特異的検出法など、発見当初から最新の知見までを総説として報告しました。本総説により、本菌の誤同定が回避され正確な情報が集積されることで、食中毒や感染症の発症数軽減につながると期待されます。

本研究成果は、2025年12月10日に国際学術誌「Microbiology and Molecular Biology Reviews」にオンライン掲載されました。

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図 Escherichia albertiiと腸管出血性大腸菌の自然界での宿主とヒトへの感染経路は異なる

我々が研究対象としていた細胞膨化致死毒素産生大腸菌がE. albertiiであること、本菌の自然宿主の同定、選択鑑別分離培地の開発など、我々の研究グループはE. albertiiの研究で世界をリードしてきました。本総説は、長年の友人で本菌の発見者であるAlbert博士とまとめた大作です。

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山﨑 伸二教授(左)、日根野谷 淳准教授(右)

掲載誌情報

【発表雑誌】Microbiology and Molecular Biology Reviews
【論 文 名】Escherichia albertii: the still unfolding journey of a misdiagnosed pathogen that became a new species and a new member of the family of attaching and effacing enteric bacterial pathogens
【著  者】Shinji Yamasaki*, Atsushi Hinenoya, Dieter Bulach, M. John Albert*

【掲載URL】https://doi.org/10.1128/mmbr.00088-23

資金情報

本研究はJSPS科学研究費(17H04651、20K06396、24K09249)の助成を受けて実施しました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院獣医学研究科
教授 山﨑 伸二(やまさき しんじ)
E-mail:yshinji[at]omu.ac.jp
准教授 日根野谷 淳(ひねのや あつし)
E-mail:hinenoya[at]omu.ac.jp
TEL:072-464-5653

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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