最新の研究成果

「通いの場」で介護予防、5%のリスク抑制が参加の決め手に ―住民が参加を考える効果を定量化―

2026年2月13日

  • リハビリテーション学研究科

概要

地域の「通いの場」は、体操などを行う住民主体の集まりで、介護予防の柱として全国に広がっています。参加によって将来の要介護リスクが下がることも、これまでの研究で報告されてきました。しかし、「どれくらいリスクが下がれば、人は参加したいと思うのか」という視点は、これまでほとんど検討されていませんでした。

大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科の上村 一貴准教授と医学部リハビリテーション学科の中村 勇貴さん(4年生)らの研究グループは、通いの場への参加に関して、住民が期待する効果の大きさを明らかにするため、5395歳の男女40人にインタビューを実施し、その回答結果を分析しました。「5年以内に要介護状態になる確率が20%の場合に、通いの場にその確率が何%下がれば参加するか?」を、smallest worthwhile difference (SWD)という指標により定量化しました。

その結果、通いの場に現在参加していない人でも、「要介護になる確率が5%ほど下がるなら、参加を考えたい」と答えた人が半数程度いることが分かりました。また、もともと参加意欲のある人ほど、必要とする効果は小さく、参加に消極的な人ほど、より大きな効果を求める傾向がありました。

本研究結果より、住民が期待する効果は決して非現実的なものではなく、近年報告されている通いの場の効果(約5%のリスク抑制)と大きく乖離していませんでした。つまり、通いの場は、多くの人にとって「効果があれば参加を検討する」という実装可能性が高い介護予防の施策である可能性が示されました。

本研究成果は、2026年2月3日に国際学術誌「Journal of the American Medical Directors Association」にオンライン掲載されました。

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一人ひとりに対面で調査を行うことは時間を要しましたが、参加者の考えを丁寧に把握できた点に大きな意義を感じています。今後は理学療法士として臨床に携わりながら、患者や地域住民の視点を大切にした研究を続けていきたいと考えています。

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中村 勇貴さん

これまで通いの場の研究では、参加した場合にどの程度の効果が得られるかという客観的な検証が中心でした。一方で、参加するかどうかを判断するのは住民本人です。本研究では、「どの程度の効果があれば参加を検討するのか」という住民の視点に着目し、SWDという指標を用いて定量化を試みました。今後、介護予防施策を考えるうえで、住民の意思決定を理解するための一つの視点になればと考えています。

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上村 一貴准教授

資金情報

本研究はJSPS科研費(課題番号:JP25K14145)の支援を受けて行われました。

用語解説

※ smallest worthwhile difference (SWD):治療や介入の対象となる患者や住民が「その程度の効果が得られるなら、負担(費用・副作用など)を考慮しても受けたい/参加したい」と判断する最小の効果。対象者の期待や選好を、治療・介入を選択する際の意思決定に反映させるための指標。

掲載誌情報

【発表雑誌】Journal of the American Medical Directors Association
【論 文 名】Estimating the smallest worthwhile difference of participation in community gathering places among older adults
【著  者】Yuki Nakamura, Kazuhiro Miyata, Kazuki Uemura.

【掲載URL】https://www.jamda.com/article/S1525-8610(26)00005-8/abstract

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科
准教授 上村 一貴(うえむら かずき)
TEL
06-6167-1250
E-mail
kuemura[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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