最新の研究成果
母乳成分のラクトフェリンが腸の粘液を作る細胞のタンパク質と結合することを発見
2026年1月6日
- 生活科学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇腸の粘液を作る杯細胞※1が分泌するIgGFcγBP※2というタンパク質が、ラクトフェリン※3と結合する仕組みの一端を解明。
◇IgGFcγBPの立体構造がラクトフェリンとの結合に重要であることを判明。
◇炎症でIgGFcγBPの検出量が一時的に低下し、回復期に再び検出されるとともにラクトフェリンとの結合も回復したことから、腸を守る仕組みの理解につながる新たな手がかりを示唆。
概要
腸は、粘液と呼ばれる“守りのバリア”を作り、さまざまな細菌や刺激から自らを守っています。一方、母乳や乳製品に多く含まれる「ラクトフェリン」という成分には、体を守る働きがあることが知られています。しかし、ラクトフェリンが腸のどこで作用し、どのような仕組みで体を守っているのかは、これまでほとんど解明されていませんでした。
大阪公立大学大学院生活科学研究科の金 東浩准教授と池田 一雄名誉教授らは、ラクトフェリンが腸内のどのタンパク質と結合して働くのかを明らかにするため、マウスの腸から結合相手を精製しました。その結果、腸の粘液を作る杯細胞が分泌し粘液中に存在するIgGFcγBPというタンパク質が、ラクトフェリンと結合することを確認しました。また、IgGFcγBPがラクトフェリンと結合する仕組みを調べたところ、タンパク質の立体構造が結合に不可欠であることが分かりました。さらに腸が炎症で傷つくと、このタンパク質は一時的に消えますが、回復すると再び作られ、ラクトフェリンとの結合能力も戻ることで腸の粘液バリアとラクトフェリンが関わっている可能性が示されました。
本研究成果は、2025年11月3日に国際学術雑誌「The Journal of Biochemistry」にオンライン掲載されました。

概要図:ラクトフェリンは、腸の粘液に存在するIgGFcγBPと結合し、腸局所で粘膜防御機構に関与する可能性がある。
金准教授からのコメント
ラクトフェリンが腸のどこで、どのように働くのかを知りたいという思いから、この研究を始めました。調べる中で、腸の粘液を作る杯細胞に存在する「IgGFcγBP」というタンパク質が、ラクトフェリンと結合することが分かりました。この結果は、ラクトフェリンが腸の表面で関わる可能性を示し、腸を守るしくみの理解につながる手がかりになります。
掲載誌情報
【発表雑誌】The Journal of Biochemistry
【論 文 名】Purification and characterization of an IgG Fc gamma binding protein from the mouse intestine that interacts with lactoferrin
【著 者】DongHo Kim, Ryoko Okamoto, Reiko Kananiwa, Kazuo Ikeda and Shigeru Saeki
【掲載URL】https://doi.org/10.1093/jb/mvaf064
資金情報
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費により実施されました。
用語解説
※1 杯細胞(Goblet cell):腸の粘液を作り、腸の表面を守る細胞である。
※2 IgGFcγBP(Immunoglobulin G Fc gamma–binding protein):腸の杯細胞が作る大きなタンパク質であり、粘液の中に存在し、免疫に関わる働きを持つ。
※3 ラクトフェリン(Lactoferrin):母乳や乳製品に多く含まれるタンパク質であり、細菌やウイルスから体を守る働きを持つ。
研究内容に関する問い合わせ先
【研究内容に関する問い合わせ先】
大阪公立大学大学院生活科学研究科
金 東浩(きむ どんほ)
E-mail:apoer2[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:橋本
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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