最新の研究成果

~電子ビームで宇宙ごみ除去へ~ ビームを送れる距離をシミュレーションで検証

2026年1月13日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇電子ビームを用いて、小型スペースデブリ1を除去する方法を提案。

◇電子ビームが電離圏2中のプラズマ3から受ける影響をコンピュータシミュレーションで検証。

◇1km程度あれば影響を受けず、細いビームを保ったまま電離圏を進める可能性を示唆。

概要

近年、スペースデブリ(宇宙ごみ)が急増しており、このままでは将来の宇宙開発に深刻な影響を及ぼすことが懸念されています。

大阪公立大学大学院工学研究科の森 浩一教授と西尾 圭太氏(研究当時:工学研究科博士前期課程2年)の研究グループはこれまで、地球上空の電離圏に存在するプラズマの性質を活用し、電子ビームを用いた小型スペースデブリ除去技術(電子ビームアブレーション推進法)を世界で初めて提案しています。 

本研究では、電子ビームが電離圏中のプラズマから受ける影響をコンピュータシミュレーションで解析した結果、電離圏中では電子ビームが真空中のように広がらず、細いビームを保ったまま約1km程度伝送できることが示されました。一方で、1km程度を超えると二流体不安定4による分裂現象も確認されました。

本研究により、電子ビームを伝送できる距離が数値上で明らかとなり、電子ビームアブレーション推進法の設計に重要な指針を与えることが期待できます。

press_0109_mori図:電子ビームアブレーション推進法のイメージ

本研究成果は、2025年12月4日に国際学術誌「Journal of Thermophysics and Heat Transfer」にオンライン掲載されました。

宇宙開発の活発化に伴って、宇宙の環境や資源を活用する研究が世界中で盛んです。我々は、地球上空の『電離圏』の性質に着目して、人類の宇宙進出を阻む大敵『スペースデブリ』を除去する独創的な技術開発に挑戦しています。

press_0109_mori01森 浩一教授

掲載誌情報

【発表雑誌】Journal of Thermophysics and Heat Transfer
【論 文 名】Particle-In-Cell Study of Electron Beam Propagation Through Ionospheric Plasma
【著  者】Keita Nishio and Koichi Mori

【掲載URL】https://doi.org/10.1039/D5TC03195H

資金情報

本研究は、防衛装備庁安全保障技術研究推進制度 JPJ004596(the Innovative Science and Technology Initiative for Security, Acquisition, Technology & Logistics Agency (ATLA); Award no. JPJ004596)の支援を受けて実施しました。

用語解説

※1 スペースデブリ:役目を終えた人工衛星やロケットの残骸、衝突や爆発で生じた破片など、地球の衛星軌道上を周回する不要な人工物の総称。秒速数キロメートルで移動するため、人工衛星や国際宇宙ステーションに衝突すると重大な被害をもたらす危険性がある。

 ※2 電離圏:地球大気の上層(約60〜1,000km)で、太陽の紫外線やX線などによって分子や原子が電離し、電子やイオンが多く存在する領域のこと。電波を反射・吸収する性質を持ち、長距離無線通信や宇宙天気に大きな影響を与える。

 ※3 プラズマ:固体・液体・気体に次ぐ「物質の第4の状態」で、原子や分子が電離して電子とイオンが共存する状態を指す。宇宙では最も一般的な物質形態であり、太陽や星、雷、オーロラなどがその代表例。

 ※4 二流体不安定(Two-stream instability):異なる性質を持つ二つの流体が接触する界面で生じる不安定現象。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
教授 森 浩一(もり こういち)
TEL:072-254-9199
E-mail:koichimori[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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