最新の研究成果
量子物質に新たな境界線 ―磁性を生み出す近藤効果を実証―
2026年1月20日
- 理学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇有機無機ハイブリッド磁性体で、新しい近藤ネックレス※1を世界で初めて実現。
◇通常は磁性を弱める近藤効果※2が、条件次第で磁性を生み出すことを実証。
◇スピンの大きさで近藤効果を切り替える新原理を発見。量子状態制御につながる成果。
概要
大阪公立大学大学院理学研究科の山口 博則准教授、冨永 悠大学院生(研究当時)、埼玉医科大学の古谷 峻介講師、大阪大学大学院理学研究科の木田 孝則助教、萩原 政幸教授、防衛大学校の荒木 幸治講師らの研究グループは、有機ラジカル※3とニッケルを組み合わせた有機無機ハイブリッド磁性体を用いて、量子スピンがネックレス状に連なる新しいタイプの近藤ネックレスの実現に成功しました。
本研究では、量子物質において知られている、スピンの大きさが量子状態を決めるという原理が、物性物理の基本現象である近藤効果にも当てはまることを世界で初めて実証しました。通常、近藤効果は、スピンが最も小さい場合には磁性を弱めることが知られています。しかし本研究において、スピンが1/2より大きい場合に、近藤効果が磁性を生み出す力として働くことを、実験と量子解析の両面から明らかにしました。つまり、スピンが最小の場合と、それより大きい場合で近藤効果の役割が根本的に入れ替わるという、量子物質に新しい境界線を示したことになります。本成果は、スピンの大きさによって量子状態を切り替えるという新しい制御原理を提示し、将来的には量子情報デバイスの実現に向けた革新的な基盤技術となる可能性が期待されます。

本研究成果は、2026年1月20日に国際学術誌「Communications Materials」にオンライン掲載される予定です。
今回の成果は、量子物質の根幹原理に踏み込むものです。従来の手法では検証が困難であった課題を、私たちが独自に進めてきた分子設計戦略RaX-Dによって初めて明らかにすることができました。今後も量子物質開拓研究センター(IQMC)を拠点に、量子相を自在に設計・制御し、量子材料研究の新たな地平を切り拓いていきます。

山口 博則准教授
掲載誌情報
【発表雑誌】Communications Materials
【論 文 名】Emergence of Kondo-assisted Néel order in a Kondo necklace model
【著 者】Hironori Yamaguchi, Shunsuke C. Furuya, Yu Tominaga, Takanori Kida, Koji Araki, and Masayuki Hagiwara
【DOI URL】https://doi.org/10.1038/s43246-025-01027-3
【掲載URL】https://www.nature.com/articles/s43246-025-01027-3
資金情報
本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR2599)及び東京大学物性研究所共同利用プログラム(大阪大学大学院理学研究科附属先端強磁場科学研究センターにて実施)の支援を受けて行われました。
用語解説
※1 近藤ネックレス:1977年にセバスチャン・ドニアック博士が提唱した、電子の「スピン」に自由度を絞って近藤格子を簡略化した量子モデル。新しい量子相の発現を予測する重要なモデルとして注目されてきたが、その実験的実現は長く達成されていなかった。2025年に山口准教授らの研究により世界で初めて実現され、量子物質研究に新たな展開をもたらしている。
※2 近藤効果:金属中の伝導電子が局在スピンと相互作用することで現れる特有の量子現象。金属中の磁性や電子状態に大きな変化をもたらす。初めて理論的に説明した近藤 淳博士の名を冠して近藤効果と呼ばれている。
※3 有機ラジカル:不対電子を持つ有機分子の総称。通常は反応性が高いが、分子設計によって安定化させることで有機磁性体として利用できる。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院理学研究科/量子物質開拓研究センター
准教授/所長 山口 博則(やまぐち ひろのり)
TEL:066-605-7039
E-mail:h_yamaguchi[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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