最新の研究成果
陸上生物で初!近赤外光を感知するトンボを発見 ~赤色を感じる仕組みはヒトと共通であることも明らかに~
2026年1月27日
- 理学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇トンボにおける赤色光を感知する能力(赤色視)を担うオプシン※1を同定し、アミノ酸レベルでの仕組みを解明。赤色視の仕組みはヒトと共通であることが明らかに。
◇サナエトンボ科のトンボは、ヒトには見えない近赤外光を感知できることを発見。
◇近赤外オプシンを改良し長波長化※2に成功。改良された近赤外オプシンが、実際に近赤外光によって細胞応答を引き起こすことも確認。
概要
赤色視は、ヒトを含む脊椎動物だけでなく一部の昆虫にも存在します。この赤色視を担う赤オプシンは、脊椎動物と無脊椎動物で独立に進化してきたことが知られています。しかし、無脊椎動物における仕組みは技術的な難しさから十分に解明されていませんでした。
大阪公立大学大学院理学研究科の小柳 光正教授、寺北 明久教授、佐藤 龍大学院生の研究グループは、昆虫の中でも特に多くのオプシン遺伝子を持つトンボに着目し、トンボの赤色視を担うオプシンを同定しました。その一部を人工的に改変して解析した結果、トンボの赤オプシンが赤色光を感知する仕組みは、ヒトを含む哺乳類の赤オプシンと共通していることが明らかになりました。さらにサナエトンボ科のトンボは、ヒトには見えない近赤外光を感知できることが分かりました。この近赤外オプシンを改良した結果、さらに長波長側に感受性をシフトさせることにも成功しました。改良型の近赤外オプシンは、近赤外光によって細胞応答を誘導することも確認できました。本研究成果は、生体深部で機能する新たな光遺伝学※3ツールとなる可能性を示しており、生命科学や脳科学への応用が期待されます。

本研究成果は、2026年1月20日に国際学術誌「Cellular and Molecular Life Sciences」にオンライン掲載されました。
トンボは童謡にも歌われるほど馴染みのある昆虫ですが、その色覚やそれを支える分子基盤にはまだ多くの謎が残されています。今回、その仕組みの一端を明らかにできたことを大変うれしく思います。トンボを含めた無脊椎動物のオプシンは未だ研究が十分とは言えず、新たな発見の可能性がある領域のため、これからも研究に励んでいきたいと思います。

佐藤 龍大学院生
資金情報
本研究は文部科学省科学研究費補助金JP22H02663(小柳)、JP23H02516 (寺北)、JP23KJ1845 (佐藤)、大隅基礎科学創成財団研究助成金(小柳)、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(PRESTO)JPMJPR13A2(小柳)、(CREST)JPMJCR25B5(小柳)の助成を受けた。
用語解説
※1 オプシン:ヒトを含む動物の目の網膜などの光受容器官に存在する光受容タンパク質。
※2 長波長化: 光は波としての性質を持ち、その波の長さを「波長」と呼ぶ。私たちヒトが目で感じ取れる光(可視光)は、およそ 400 nm から 700 nm の範囲にあり、波長が短い順に 紫・青・緑・黄・赤 として知覚される。これは虹の色の並びと同じである。長波長化とは、ここでは、受容する光の波長が より長い方向(赤い方向)へと変化することを指す。
※3 光遺伝学:標的細胞に光感受性タンパク質を遺伝学的に導入・発現させ、その細胞を光により制御する技術。神経科学や細胞生物学の発展に大きく寄与している。
掲載誌情報
【発表雑誌】Cellular and Molecular Life Sciences
【論 文 名】Dragonfly red opsins share a common tuning mechanism with mammalian red opsins and further enhancement of near-infrared sensitivity
【著 者】Ryu Sato, Akihisa Terakita, Mitsumasa Koyanagi
【DOI URL】https://doi.org/10.1007/s00018-025-06017-9
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院理学研究科
教授 小柳 光正(こやなぎ みつまさ)
TEL:06-6605-2583
E-mail:koyanagi[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs