最新の研究成果

有機ELの動作を中間体の電子スピン応答から探る ~電子正孔対と電場変化の新たな知見を獲得~

2026年1月28日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇電気化学発光セル(LEC)において、発光強度の変化を磁気共鳴で検出するELDMR法で信号の観測に成功。また、その起源が電子正孔対であることを実証。

◇電圧変化に伴ってLEC内部の電場環境が変化する様子を明らかにし、電場の低下によって発光効率(=発光強度/電流)および磁場効果が大きく向上することを示した。

概要

電気化学発光セル(LEC)は、発光層中に溶け込ませたイオンの働きにより駆動する高輝度の有機EL素子で、次世代の発光デバイスとして注目されています。しかし、イオン移動を伴う動作機構は非常に複雑で、特に素子内部の電場環境を直接把握することが難しく、発光メカニズムの理解は十分に進んでいません。発光強度のわずかな変化を磁気共鳴で検出するELDMR法は、電子正孔対を捉えられるほぼ唯一の手法であり、その信号が電場に敏感であることから、内部電場の指標となる可能性が期待されています。

大阪公立大学大学院理学研究科の鐘本 勝一教授、堤 晴香氏(研究当時、大学院生)らの研究グループは、LECにおいて初めてELDMR法で信号の観測に成功し、その起源が電子正孔対であることを実証しました。さらに、電圧変化に伴ってLEC内部の電場環境が変化する様子を明らかにし、電場の低下によって発光効率および磁場効果が大きく向上することを示しました。これらの知見は、LECに限らず一般的なOLEDにも適用可能な、発光効率向上の新たな指針を与えます。

本研究成果は、2025年12月16日に国際学術誌「Advanced Optical Materials」にオンライン掲載されました。

pr20260128_kanemoto01図: LECへの印加電圧の増加過程(正掃引)及び逆掃引過程において計測されたELDMR強度とEL強度の関係。逆掃引では同じEL強度でもELDMR強度が大きく、電場が弱いことを示す。

<研究者からのコメント>

LECの動作メカニズムでは電場の影響が強いと考えられていながらも、なかなか発光輝度などとの関係は引き出せていませんでした。研究当時、修士学生だった堤さんの丹念な実験により、その中身の扉がようやく開かれた思いです。

掲載誌情報

【発表雑誌】Advanced Optical Materials
【論 文 名】Unveiling How Electric Fields Influence Electroluminescent Properties in Light-Emitting Electrochemical Cells via Operando Optically Detected Magnetic Resonance
【著  者】Haruka Tsutsumi, Moena Yasuda, Takayuki Suzuki, Katsuichi Kanemoto

【掲載URL】https://doi.org/10.1002/adom.202502592

資金情報

本研究は、JST CREST(JPMJCR2431)、科研費基盤A(JP24H00475)の支援を受けて実施しました。

用語解説

※ 電気化学発光セル(LEC):Light Emitting Electrochemical Cellの略。内在させたイオンによる電荷注入を介して光る有機EL素子の一種。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院理学研究科物理学専攻
教授 鐘本 勝一(かねもと かついち)
TEL:06-6605-2550
E-mail:kkane[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

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