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【世界初】人工光合成による「生成・発電・炭素循環」の一貫システム実証に成功 ~飯田グループHDと大阪公立大、住宅用エネルギー供給の脱炭素化へ大きな一歩~

2026年2月9日

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飯田グループホールディングス株式会社(本社東京都武蔵野市、代表取締役社長西野弘)は、大阪公立大学(大阪市城東区、理事長福島伸一)との共同研究により、「人工光合成技術」を用いた住宅向けエネルギーシステムの装置化に成功しました。大阪・関西万博において、太陽光による蟻酸生成から、その蟻酸を用いた発電、さらに排ガスからの二酸化炭素回収・利用に至る「炭素循環型」の一連の動作について、世界で初めて実証実験に成功したことをお知らせいたします。当社と大阪公立大学「人工光合成研究センター」は、2015年より人工光合成技術を活用した「IGパーフェクトエコハウス」の実現に向けた共同研究開発を行っております。

人工光合成技術とは

植物の光合成を手本として、太陽光と二酸化炭素と水から有機物を生成する技術で、我々は有機物として水素キャリアでもある蟻酸の生成について研究しています。

IGパーフェクトエコハウス研究では、水素と比べて容易に保管できる蟻酸としてエネルギーを蓄積しておき、使用したいときに化学反応で蟻酸を水素に変換することで、安全にエネルギーを生成できる仕組みを開発しています。

蟻酸は、水素と二酸化炭素から合成される有機物の一種であり、消防法上の危険物に該当しますが、78wt%以下の水溶液であれば非該当となります。常温常圧で液体であることから、可燃性の気体で密度の低い水素自体よりも扱いやすく、水素エネルギーの貯蔵媒体として注目されています。例えば、実証実験において製造していた10wt%の蟻酸水溶液は、20 Lに約1,000 L相当の水素が含まれており、これはエネルギーとして約3 kWh、日本の家庭で一日に必要なエネルギーの1/5に相当します。このことからも、蟻酸は水素エネルギーを安全に貯蔵・運搬できる物質として非常に有益な有機物といわれています。

IGパーフェクトエコハウスとは

従来、太陽光は再生可能エネルギーの筆頭として利用されていますが、気象条件・時間に大きく左右され、住宅での使用においては、十分に太陽光のエネルギーを得られない時間帯にも電力等が必要になるという大きな課題がありました。その課題を解決すべく、当社と大阪公立大学の共同研究チームは、人工光合成技術によってエネルギーを蓄え、任意のタイミングで使用するシステムを開発しています。このシステムは主に以下の3つのプロセスで構成される「炭素循環型」の仕組みです。

pr20260209_img01IGパーフェクトエコハウスの概略図

  1. 生成:人工光合成によって、太陽光エネルギーと水と二酸化炭素からエネルギーキャリアである蟻酸を生成します。
  2. 水素生成:エネルギーが必要な時に、化学反応によって蟻酸を分解し、水素と二酸化炭素の混合ガスを得ます。
  3. 発電と循環:得られた混合ガスで発電を行い、電気エネルギーと発電時の熱エネルギーを住宅に供給します。

さらに発電時の排ガスに含まれる高濃度の二酸化炭素を回収して再度1の蟻酸生成に活用します。このように、化石燃料を燃焼させてエネルギーを得る方法とは異なり、住宅でエネルギーを使用しても大気中の二酸化炭素を増やすことがなく、かつIGパーフェクトエコハウスのシステム中にも蟻酸や排ガスという形で二酸化炭素を閉じ込め、炭素資源を有効利用することができます。 

大阪・関西万博での実証実験

大阪・関西万博にける実証実験では、以下の3つの装置を試作し、住宅を想定したシステムとして一連の動作を検証しました。

  1. 人工光合成装置:太陽光集光パネルと蟻酸生成セルからなり、二酸化炭素から蟻酸を合成します。
  2. 蟻酸分解装置:合成された蟻酸を分解し、水素を取り出します。
  3. 水素発電機:得られた水素を用いて発電を行います。


pr20260209_img02実証実験に使用した装置の写真

本実験では、これらの装置を連携させ、発電時に発生する排ガス(二酸化炭素)を回収して再度1の装置で蟻酸合成に利用する「炭素循環」の実証にも成功しました。 

このように、人工光合成だけでなく、発電や排ガス利用による炭素循環まで、住宅を想定したシステムでの一連の動作について、世界で初めて実証実験に成功しました。なお、実証実験において得られた電力は、弊社パビリオン内のIGパーフェクトエコハウスの模型に使用されました。今後は実用化に向け、実証実験で得られたデータを活かしつつ、さらなる効率向上、小型化等に取り組んでいく予定です。

pr20260209_img03実証実験由来の電力で光る模型

該当するSDGs

  • SDGs07
  • SDGs11