がん包括ケア科学

基本情報

がん包括ケア科学

代表者 教授
作田 裕美
連絡先 TEL:06-6645-9016
MAIL:sakuda[at]omu.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。 
概要

本分野は、「がん看護学」と「急性期看護学」を二本柱とし、がん患者・家族と急性期病態にある患者・家族への専門的看護援助のあり方と、そこに働く看護師の働き方に焦点を当てた教育と研究を行っています。今日のがん医療の進展には目を見張るものがあります。がん告知がすなわち死の宣告と受け止められていた頃からすれば、まさに隔世の感を禁じ得ません。がん看護の関心も、「がんを病む人」が抱える症状悪化や治療に伴う苦痛の緩和に重きをおいていたものから、「がんを治療しながら生活する人」の、その人固有のニーズに応えようとする拡がりのある関心へと移行してきております。がん患者は不治の病に侵され苦痛に満ちた治療に耐えざるをえない悲劇的な人ではなく、がんを体験しながら生き抜くサバイバーなのです。がんサバイバーが、その人らしく生き抜くことを支援するために、がん看護を担う私たちは何を学び、どんな力をつければよいのでしょうか。この問いから新たな関心が生まれ、安寧を届けるケアの開発へとつながるのです。
同時に、本分野の重要な柱である急性期看護学は、様々な背景をもって急激に発症し重篤な状況にある患者とその家族を対象とし、周術期や重症集中治療等めざましく進展する急性期医療の場に顕在あるいは潜在する新たな課題、救急現場における患者・家族支援、生命の危機に直面する人の意思決定支援など、幅広い臨床課題を対象としています。これらの看護課題の探求は、現代を生きる患者の生と生活を支えるに不可欠な看護実践の基盤をなすものです。

常に最新の医療技術が投入されるがん・急性期ケアの現場はストレスフルで、そこに働く看護師(集団)が抱える問題も多様で深刻です。したがって、看護の質向上には、そこに働く看護師(集団)の働き方に影響を及ぼす組織文化や組織の構造設計等に関する検討も不可欠となります。これらもまた、「がん包括ケア科学」の探求課題です。
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教育について

【学部教育】
臨床健康危機看護学に関する授業(講義・演習・実習)を担当します。主に周手術期にある患者・家族を対象に,心身の危機的状況下から生活機能の回復,社会復帰に至るまでの患者の生活過程を整えるために必要な看護の考え方と方法について教授します。臨地実習は,附属病院の外科系病棟,中央手術部,救命救急センター,ICUHCUで行います。受け持ち患者を通して,「病気を治療しながら生活する人」を共感的に理解する態度を養うと同時に,その人の全体像の把握に始まり,その人がその人らしく生きる姿を看護のゴールとして描き,必要なケア計画を立案し,実施・評価を行う一連のプロセスを通して,急性期看護実践能力の基礎力の育成を目指しております。「研究セミナー」では,臨床健康危機看護学に関心をもつ34年生を対象に,学生の臨床疑問を育て,研究疑問へと誘うことから研究の基礎を実践的に楽しく学びます。

【大学院教育】

博士前期課程では,がん患者および急性期患者の診断・治療過程における複雑な症状マネジメント,生活者としてのがんサバイバーが直面する自立(療養と職業の両立)への支援,先進治療の進展とともに生じる倫理的諸問題をはじめとする課題に取り組みます。さらに,がん看護・急性期看護の多様な臨床現場に従事する看護師(集団)の働き方や医療経済政策の課題を含め,現代の臨床看護が直面する問題を包括的に探究します。加えて,2026年度より「がん看護専門看護師(CNS)」の育成にも取り組み,がん看護の高度実践と学問的発展に資する人材養成を推進します。

博士後期課程では,がん患者・急性期患者およびその家族が体験する身体的・心理的・社会的苦痛を,広範な理論・概念の学びを通して共感的かつ科学的に理解します。その学びを発展させ,新たながん看護・急性期看護の創生を目指します。また,がん看護・急性期看護に従事する看護師(集団)の働き方に関する検討も,臨床看護の質向上を追求するがん包括ケア科学の重要な探求課題です。

研究について

主な研究内容

概要

本分野では,「がん看護学」と「急性期看護学」を二本柱とし,臨床看護の今日的課題に取り組んでいます。

がん看護学

がん治療後後遺症である「リンパ浮腫」の症状緩和を目指し,患者の現状把握,早期発見のための指標開発,看護介入の効果検証などを行っています。また,放射線看護においては,医療被ばくに関する臨床現場の現状把握と課題の抽出に加え,放射線治療・診断・核医学を含む臨床放射線看護における患者支援や有害事象緩和に向けた研究を展開しています。

急性期看護学

救急・急性期医療における看護の機能と役割を明らかにするとともに,急性期初療に従事する看護師のコンピテンシーを探求しています。さらに,急性期看護に特有の症状マネジメントやチーム医療における看護の役割に焦点をあて,臨床現場で求められる実践知を学術的に深化させています。

がん看護と急性期看護という二つの視点を往還しながら,患者・家族に寄り添うケアの質向上と,未来の看護実践を創造する研究を推進しています。

主な研究業績

  1. 作田裕美他.病院における効果的・効率的な放射線防護・安全教育のあり方に関する検討.日本放射線看護学会誌.202513(1)1-3
  2. 高尾鮎美他.緩和ケアの専門家がいない環境で質の高い緩和ケアを提供するための方略:スコーピングレビュー.日本緩和医療学会誌.202520(1)9-21
  3. 作田裕美他.フライトナースの任用に活用する選択尺度作成の試みとその検討.日本救急看護学会雑誌.2024269-19
  4. Ayumi Takao et al. Good Death and Quality of End-of-Life Care in Patients with Coexisting Cancer and Dementia: Perspective of Bereaved Families.Palliative Medicine Report. 2024;5(1):215-224 

スタッフ

教授 作田 裕美
講師 高尾 鮎美
特任助教 久保田 佳