医学部TRENDY Vol.07

認知症ゼロ社会を目指して

認知症病態学 富山 貴美 研究教授

私は、認知症について約25年にわたり研究しています。当初は、認知症のメカニズム解明など基礎研究に取り組んでいましたが、研究を進めていく中で「治療薬を作ってほしい」という声が多く寄せられました。そこで『医学研究に携わる以上、社会に役立つ研究を行うべき』と考え始め、治療薬や予防薬の研究に取り組むようになりました。
認知症の原因疾患は、約7割がアルツハイマー病で、原因となる蛋白質が脳に溜まり、神経細胞が死ぬことで引き起こされます。そのため、原因蛋白質を脳から除去すれば、認知症は簡単に治せるのではないかと思われます。しかし、実は何年も前から原因蛋白質によって神経細胞は殺されています。死んだ細胞を元に戻すことはできないため、認知症発症後に原因蛋白質を取り除いたとしても治療は困難なのです。そこで私たちは、神経細胞が死ぬ前に予防することが重要であると考え、予防食品や予防薬の開発に取り組んでいます。

今後の課題は、定期健康診断での超早期診断や薬効評価に使用できる新しいバイオマーカーの確立です。健康診断などによって、認知
症に進行する疑いのある人を早期に見つけ出すことができれば、予防食品や予防薬によって発症を食い止めることができるのではないか
と考えています。

認知症克服の将来イメージ

FDA のオーファンドラッグに指定!

予防薬として、ハンセン病などの治療に使われてきた抗生物質『リファンピシン』を用いた『経鼻リファンピシン』の開発を進めています。2023年3月には、FDA(米国食品医薬品局)よりオーファンドラッグの指定を受け、今後は米国で臨床研究を進めていく予定です。

関連プレスリリース

認知症に加えALSの治療法に光 前頭側頭型認知症・ALSに対するリファンピシンによる改善効果を確認

注目が集まる、細胞老化

近年、加齢に伴って起こるさまざまな病気が、実は細胞機能の衰え、すなわち『細胞老化』によって起こると考えられ始めました。さらに老化細胞を特異的に除去する薬『セノリティクス』の開発も世界的に注目を集めています。最近では認知症も老化の一種であるという考えが提唱されており、老化をくい止め脳の若返りを図ることで、認知症を予防する食品の開発を私たちの研究室で進めています。

認知症病態学 富山 貴美 研究教授 

趣味
  • 絵画鑑賞(クリムトやゴッホ、川瀬巴水など)
  • インターネットで映画鑑賞
    昔は洋画(特にSF)を見ることが多かったが、最近は何でも見る
  • 休日のウォーキング(神社や仏閣巡りが好き)
  • 多肉植物を育てる
取材対応可能なテーマ

認知症、認知症予防薬、認知症予防アンチエイジング食品、老化研究、若返り研究

富山 貴美 研究教授

日本認知症学会 代議員
株式会社メディラボRFP(2018年設立) 取締役
セレブロファーマ株式会社(2020年設立) 代表取締役

 2023年9月発行