最新の研究成果

ベイズ統計によってデータの対称性を探索する方法を開発-遺伝子解析などへの応用が期待-

2022年8月26日

  • プレスリリース
  • 理学研究科

本研究のポイント

◇多次元データの対称性をベイズ統計によって効果的に探索する数学的方法を開発

◇ベイズ統計のネックとされていた積分計算の困難さに対し、正確な公式を導出

◇遺伝子解析などの応用が期待

概要

大阪公立大学大学院理学研究科の伊師 英之教授、アンジェ大学(フランス)のPiotr Graczyk教授、ワルシャワ工科大学(ポーランド)のBartosz Kołodziejek助教、ヨーク大学(カナダ)のHélène Massam教授からなる国際研究グループは、群の表現論※1という純粋数学分野の知識を活用し、多次元データの対称性をベイズ統計の技法によって探索する方法を開発しました。

ベイズ統計は、計算機の性能向上や、人工知能への活用の可能性から、近年一層の脚光を浴びており、20227月には、文部科学省が策定した「2030年に向けた数理科学の展開-数理科学への期待と重要課題-」内の、AI×数理科学の分野で取り上げられています

https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/kagaku/2022/mext_01067.html)。ベイズ統計には複雑な積分計算が必要とされるため、多くの場合、近似計算で処理されています。本研究では、未だ見つけられていなかった正確な積分公式を導出することができました。今後、先行研究に比して探索の精度が上がり、遺伝子解析などの注目分野においてさらなる応用が期待できます。

本研究成果は、「Annals of Statistics」にオンライン掲載済みです。


私の専攻は非可換調和解析とよばれる純粋数学の分野で、美しい積分公式を追い求めて研究を続けてきました。さまざまな出会いを経て数理統計が積分公式の宝庫だと認識するようになり、現在では統計の分野で共同研究を展開しています。今回の研究のような、純粋数学と数理統計の双方にとって面白い結果が出せるよう今後も研究を進めていきます。

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伊師 英之教授

資金情報

●JSTさきがけ「正定値対称行列の数理に関する革新的新技術」(2016.10.5~2020.3.31)
●科研費(基盤研究(C)16K05174)「凸錐上の調和解析とその応用」(2016.4.1~2021.3.31)
●科研費(基盤研究(C)20K03657)「凸錐上の解析と幾何の新展開」(2020.4.1~2024.3.31)

掲載紙情報

発表雑誌: Annals of Statistics
論 文 名: Model selection in the space of Gaussian models invariant by symmetry
著     者: Piotr Graczyk, Hideyuki Ishi, Bartosz Kołodziejek and Hélène Massam
掲載URL: https://doi.org/10.1214/22-AOS2174 (2022616日オンライン掲載)



プレスリリース全文 (473.6KB)

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 理学研究科
教授:伊師 英之(いし ひでゆき)
TEL:06-6605-2611
E-mail:hideyuki-ishi[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

該当するSDGs

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