最新の研究成果

生き物のように滑らかに! 注目デザイン「モーフィングフラップ」の構造設計に成功

2023年11月10日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇ 航空機の空力性能向上への貢献が期待されるモーフィングフラップ。
◇「トポロジー最適化※1」を活用した新たな設計手法を開発し、モーフィングフラップならではの滑らかな変形を再現した構造設計に成功。
◇ 計算時の表現を工夫し「最適な材料配置」をシミュレーション。

概要

航空機の主翼には、フラップと呼ばれる揚力を調整する装置があります。フラップの構造をシームレス化したモーフィングフラップは、イルカの尾びれのように滑らかな変形が可能で、空気抵抗の軽減や騒音対策に貢献する技術として注目されています。モーフィングフラップには、滑らかな変形を可能にする自由度の高い構造設計が必要です。そこで、近年橋や建築物などさまざまな構造物の設計で用いられている「トポロジー最適化」という設計手法の活用が期待されています。しかし、この手法は「強度を損なわずいかに軽量化するか」が主な目的のため、構造に大きな変形が生じるモーフィングフラップでは、シミュレーション計算でのエラーが多いことが課題です。

大阪公立大学大学院 工学研究科の上林 恵太大学院生(博士後期課程2年、JSPS特別研究員DC2)、小木曽 望教授、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)の渡邊 育夢主幹研究員、東京大学大学院工学系研究科の山田 崇恭准教授らの研究グループは、計算エラーを防ぐ工夫を施した新たなシミュレーション設計手法を開発し、モーフィングフラップならではの滑らかな変形を再現した構造設計に成功しました。

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図 通常のフラップとイルカの尾びれのように滑らかな動きのモーフィングフラップの比較

本研究成果は、国際学術誌「Structural and Multidisciplinary Optimization」に、2023 106日に掲載されました。

既存方法の単なる適用ではなく、さらなる有効化のために開発する道のりは、面白くも険しくもありました。
航空機の革新技術となるモーフィング翼の実用化へは、材料の強度や実際の飛行中に空気から受ける力と協調できる必要があるためまだ遠い道のりですが、今回設計した装置の実現に向けさらに研究を進めます。

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上段左より上林大学院生、小木曽教授
下段左より渡邊主幹研究員、山田准教授

掲載誌情報

【発表雑誌】Structural and Multidisciplinary Optimization
【論文名】Level-set-based topology optimization of a morphing flap as a compliantmechanism considering finite deformation analysis
【著者】Keita Kambayashi, Nozomu Kogiso, Ikumu Watanabe and Takayuki Yamada
【掲載URL】https://doi.org/10.1007/s00158-023-03670-1

資金情報

 本研究は、科研費基盤研究(B)(21H01535)、日本学術振興会特別研究員奨励費DC2(23KJ1842)、JST大学フェローシップ創設事業 (JPMJFS2138)などの支援を受けて行われました。

用語解説

※1 トポロジー最適化…「構造性能を最も良くするために、どこに材料を配置すればよいか」を考える、最も自由度が高い構造最適化手法。モノの外側の形だけではなく、内側にどのように孔が空くべきかまでが表現できる。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 工学研究科
教授 小木曽 望(こぎそ のぞむ)
Tel:072-254-9245
E-mail:kogiso[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
Tel:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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