学部長・研究科長挨拶

学部長・研究科長挨拶

法学部長・法学研究科長 鶴田 滋

法学部長・法学研究科長 鶴田 滋

 

法を学ぶとは、どういうことでしょうか。みなさんの多くは、法学をこれまで学んだことはないと思います。そのため、様々な分野の職業に就けるから、などといった学問そのものとは別の理由から法学部への入学を目指されていることと思います。

しかし、社会において法が存在し、それが有効に機能していることは、われわれ市民にとって極めて重要です。なぜなら、法は、権力者(国家)が社会を統制するためではなく、権力者が法に拘束されることにより、市民の予見可能性を確保し、市民の自由な生活を保障するためにあるからです。たとえば、AさんがBさんからある物を盗まれた場合、Bが刑法に基づいて裁判所(国家権力)により罰せられる、あるいは、裁判所がBからその物の返還を求めるAの民法上の権利を強制的に実現する仕組みが機能していることによって、われわれは法に反しない限り自由に生活することができます。例えば、仮に裁判所が法に拘束されず、Bが社会的に高い地位にあるために罰せられない場合には、Aの自由は保障されず、Bが法に反していないにもかかわらず罰せられる場合には、Bの自由が保障されないことになります。

法学部では、社会において通用する法にどのようなものがあるのかを知り、それがなぜ存在するのかを理解します。さらに、国民主権の憲法を有する日本国では、国民がどのような法を作るのかも決めることができますので、日本国において通用する法が今の社会にとって望ましいものであるかを検証することも求められます。このように、法学部は、民主主義社会を担い、様々な分野で活躍する、法的なものの考え方を会得した市民を育成することを目的としています。未来の社会を担うみなさんが、法学部で主体的に学ぶことを期待しています。