理念・特色
理念
大阪市立大学と大阪府立大学を基礎として開設される大阪公立大学は、幅広い学問領域を擁する総合大学として、様々な分野で活躍する優れた人材を育成することをめざす。法学部も、その一翼を担うものである。
大阪公立大学の前身のひとつである大阪市立大学においては、新制大学として発足した昭和24年に法文学部が設置されたが、この法文学部が法学部と文学部とに分割され、法学部が独立した学部となったのは、昭和28年のことである。爾来、法学部は、総計では約1万名の有為の卒業生を、社会の様々な分野に送り出してきた。法科大学院制度が創設されるまでは、法曹界に多数の優れた人材を送り出してきたし、卒業後、国家公務員や地方公務員として公務の一翼を担い、公共の福祉の増進に献身した者や、民間企業に就職し、我が国の経済発展に貢献した者も、多数に上る。このような大阪市立大学法学部の伝統と成果を基礎として、大阪公立大学における法学部は設置される。
そもそも、法学部において研究および教育の対象となる法学および政治学は、民主主義社会において中核を担う市民を育成するために不可欠な学問領域である。大阪公立大学法学部は、約70年にわたって法学および政治学の研究教育機関として重要な役割を担ってきた大阪市立大学法学部の伝統を継承しつつ、社会科学的な素養と法的思考力(リーガル・マインド)を身につけ、人権感覚豊かで有能な、民主主義社会の担い手となりうる人材を養成することを教育の理念・目的とする。こうした人材を社会の多方面に供給することが、ますます複雑化する日本社会および国際社会の健全な発展と安定に大いに寄与するものと信じるからである。
それに加えて、大阪公立大学法学部は、今日の社会状況を踏まえ、学生に、公務の領域と企業活動の領域とのいずれにおいても必要とされる、合理的な判断能力を習得させることに留意する。公務の領域においては、社会成員の福利の総計を増大させることと、一人ひとりの社会成員の権利を保障することとの、精密な衡量が求められている。また、企業活動の領域においては、営利追求と企業としての社会的責任の履行との、これもまた精密な衡量が求められている。そして、そうした衡量を、経済と社会のグローバル化やそれに随伴する多文化化を前提として行わなければならないのが、今日の状況である。合理的な判断とは、何よりもまず、そうした衡量を過誤なく遂行した結果としての判断であり、そうした判断を遂行する能力は、法学や政治学を深く学び、社会科学的な素養や法的思考力を陶冶することによって身につけられるものである。大阪公立大学法学部は、そうした合理的な判断能力を習得した卒業生を社会に送り出すことに意を用いる。
さらに、大阪公立大学法学部は、研究者となることを志し、大学院に進学しようとする者や、法曹を志望し、法科大学院に進学しようとする者に対して、大学院もしくは法科大学院における学修を中途で挫折することなく遂行するために必要な、論理的思考能力や表現力を身につけさせることにも注力する。
特色
大阪公立大学は、「教育」「研究」「地域貢献」の基本3機能を維持しつつ、「都市シンクタンク」「技術インキュベーション」の2つの機能を強化することによって、従来の公立大学の枠を超えたスケールで大阪に貢献することをめざす。こうした大阪公立大学の全体としての方針を踏まえ、法学部においても、大阪が、そして国内外の諸都市が直面する現代的諸問題の探求および解決に向けた研究に積極的に取り組み、その成果を学生への教育に還元する。このように、研究・教育の素材や対象として都市と地域の諸問題を重視することが、大阪公立大学法学部の特色としてあげられる。
そのため、法学及び政治学に関する体系的な知識・概念・論理を取得させるとともに、それらを具体的な事例に適用し、操作し、解決する訓練を重視した教育カリキュラムとする。具体的には、司法コース、行政コース、企業・国際コースからなる希望進路に応じた履修のガイドラインを設けるとともに、少人数の演習科目を多彩に展開する。とりわけ、3年次以上を対象とする専門演習・専門特別演習を必修とし、全員に対して綿密な教育を施す。最終的には、これらを通じて法学と政治学の専門的な知識を習得した卒業生が、それぞれの活動領域で、法的思考力、政治学的知見、そして合理的な判断能力を発揮し、より良い社会の実現に貢献することが、大阪公立大学法学部のめざすところである。
他大学の状況を見渡しても、わが国では、法学部卒業者は、法曹のみならず、民間企業や官庁・自治体等に就職する。実際、前身である大阪市立大学法学部においても、卒業生のほぼ全員が法科大学院等への進学又は就職決定をしており、卒業生に対する需要は極めて高いと認められる。また、法学・政治学分野の研究者養成という点でも、これまで一定の大学院進学者を輩出するなど、その基盤となる学修機会を提供してきた。
大阪公立大学法学部においては、この伝統を継承しつつ、これまで以上に大学院との連携をはかることにより、その機能を強化する。法曹養成に関しては、早期卒業を視野に入れたいわゆる「法曹コース」を「法曹養成プログラム」という名称で導入するとともに、本学部を基礎に設置する大学院法学研究科法曹養成専攻(法科大学院)と連携協定を締結し、効果的な法曹養成教育を実施する。また、研究者養成及び高度職業人養成に関しては、同じく設置する大学院法学研究科法学政治学専攻の一部科目を法学部で先取り履修できる制度を新たに設ける等により、大学院への円滑な接続を視野に入れつつ学部教育を展開している。