肩・肘関節グループ
肩・肘関節グループ
大阪公立大学整形外科 肩・肘関節グループでは、肩関節・肘関節疾患に関する臨床研究および基礎研究を幅広く行っています。大学にはスタッフ2名、大学院生2名が在籍し、関連施設には15名の肩関節外科医が所属するグループです。日常診療だけでなく、腱板筋や腱・靭帯などの基礎研究、動物モデルを用いた研究にも積極的に取り組んでおり、学術活動は日本整形外科学会、日本肩関節学会、ヨーロッパ肩肘学会など国内外の学会で積極的に発表を行っています。また、当グループでは若手医師や大学院生の海外留学も積極的に支援しており、これまでにアメリカ・カナダやフランスの著名な肩関節センターでの研修や研究活動を行い、国際的視野を持った人材育成にも力を入れています。
臨床活動としては、火曜日と金曜日に肩関節の専門外来を設けており、周囲の医療機関と連携しながら診療を行っています。診療の際は、近隣の施設からの診療情報提供書(紹介状)をご持参いただけると、より円滑な診察が可能です。肩関節疾患は骨の変性に限らず、筋肉や腱など軟部組織の障害が多く、診断にはX線だけでなくMRIが非常に重要です。当院では大学病院ならではの高次医療を提供する一方で、近隣病院と連携し、迅速なMRI撮像が可能な体制を整え、正確な診断と治療方針の立案に努めています。
以下に、当グループで扱っている代表的な疾患や手術について簡単にご紹介します。
対象疾患および手術療法
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腱板断裂
肩の痛みや腕を挙げる動作の障害を引き起こす疾患で、比較的若い方では外傷によって発症することが多い一方、加齢や使いすぎによって自然に発生することもあります。腱板は肩の安定性と動きに重要な役割を果たしており、断裂が生じると日常生活に支障をきたすことがあります。治療は保存療法(注射やリハビリ)で改善することもありますが、断裂の大きさや症状によっては、関節鏡視下腱板修復術を行うことがあります。当院では、関節鏡視下腱板修復術を行っており、断裂の状態に応じてsuture-bridge法(図1)を基本とし、広範囲な断裂に対しては再断裂率の低い筋前進術(腱板筋を肩甲骨から剥離する)(図2)を併用しています。手術後は4〜6週間、外転装具の装着が必要です。
図1
図2
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反復性肩関節脱臼
転倒やスポーツ(ラグビーやサッカーなどのコンタクトスポーツ)による外傷をきっかけに肩関節が脱臼し、その後も亜脱臼や脱臼を繰り返す状態です。原因としては関節唇損傷や関節窩骨折が挙げられます。治療は、関節唇修復術(Bankart修復術)(図3)や烏口突起移行術(Latarjet法)などを行いますが、患者さんの年齢、活動レベル、脱臼の原因や骨欠損の程度を総合的に考慮し、最適な治療方針を決定しています。
図3
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拘縮肩
俗にいう四十肩・五十肩(凍結肩)は、原因不明に起こる肩の炎症や、転倒などの外傷をきっかけに二次的に生じることがあり、疼痛や可動域制限が特徴です。症状は炎症期、拘縮期、回復期を経て改善します。炎症期には鎮痛薬や注射療法で炎症を抑え、拘縮期には可動域訓練を行います。多くは保存療法で改善しますが、半年から1年経過しても症状が改善しない場合、関節鏡視下関節授動術を行い、硬くなった関節包を切開して肩の動きを回復させます。
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変形性肩関節症
広範囲の腱板断裂や軟骨の障害により肩関節の機能障害を引き起こします。肩関節には、膝や股関節と異なり、解剖学的人工肩関節置換術(図4)とリバース型人工肩関節置換術(図5)の2種類があり、骨の変形や腱板筋の状態に応じて適切な方法を選択します。当グループでは、三次元シミュレーション(図6)やナビゲーション(図7)、患者支援ガイドを活用し、患者さんごとに3D-CTを用いて最適な術前計画を立てております。また術中もナビゲーション技術を用いて正確で安全な手術を提供しています。
図4
図5
図6
図7
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術後疼痛コントロール
当グループでは関節鏡手術を行う際、すべての患者さんに対して肩関節を支配する神経に「斜角筋間ブロック」を施行し、術後の疼痛軽減に努めています。また、人工肩関節置換術においては、われわれが独自に開発した「カクテル療法」を術中に筋肉や皮下に注射し、術後の疼痛を軽減しています。これにより、術後の痛みを可能な限り抑え、早期のリハビリテーションや機能回復を促進しています
スタッフ

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間中 智哉Tomoya Manaka
研究者情報- 日本専門医機構認定整形外科専門医
- 日本肩関節学会 代議員
- Reverse Shoulder Arthroplasty License
2002年 大阪市立大学医学部卒業 2013年 大阪市立大学大学院 整形外科 病院講師 2013年 Division of Orthopaedics and Trauma Surgery, Centre Hospitalier Privé Saint-Grégoire, Saint-Grégoire, France 2023年 大阪公立大学大学院 整形外科 講師 -
中澤 克優Katsumasa Nakazawa
- 日本専門医機構認定整形外科専門医
- Reverse Shoulder Arthroplasty License
2014年 千葉大学医学部卒業 2024年 Santy Orthopedic Center, Lyon, France
OCM Orthopädische Chirurgie München, Germany2025年 大阪公立大学大学院 整形外科 病院講師
その他の活動
肩関節の疾患に対する治療は、手術だけで完結するものではありません。より良い回復を目指すためには、術前・術後のリハビリテーションが非常に重要です。
当院では、理学療法士と定期的に勉強会を行うことで、最新の知見と技術を診療に反映しています。
日本整形外科学会、日本肩関節学会、ヨーロッパ肩肘学会など国内外の学会発表