足の外科グループ

足の外科グループ

大阪公立大学整形外科 足の外科グループでは、足部・足関節の多様な疾患に対して専門的な診療を行っています。足部は、日常生活における「立つ」「歩く」といった基本的動作を支える重要な部位であり、わずかな痛みや変形でも、歩行機能や生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。

近年、いわゆる“人生100年時代”を迎え、活動的な高齢者が増えています。一方で、足の痛みや変形がきっかけで活動量が減り、ADL(日常生活動作)が低下してしまうケースも少なくありません。当グループでは、こうした足部由来の機能障害に対し、的確な診断と保存的・手術的治療を組み合わせ、患者様の「再び歩ける喜び」を取り戻すお手伝いをしています。

手術治療においては、前足部変形及び関節障害(外反母趾矯正術、母趾MTP関節固定術、母趾MTP関節人工関節置換術、第2-5趾関節形成術など)、後足部変形及び関節障害(距腿関節固定術(関節鏡視下または観血的)、距骨下関節固定術、人工足関節置換術、足関節固定術、人工距骨置換術など)まで幅広い選択肢を備えており、個々の病態とライフスタイルに応じた個別化医療を実践しています。

足部の手術は整形外科の中でも特に専門性が高く、術後の歩行機能や靴の適合にも配慮が求められます。当グループでは、患者様の将来を見据え、確かな技術と丁寧なフォローアップで、長く快適に歩き続けられる足を提供することを目指しています。

対象疾患および手術療法

前足部変形及び関節障害

  • 外反母趾矯正術

    写真にあるように、外反母趾による著明な前足部変形があり、見た目も悪く、はける靴が制限されるなどの問題があります。また、足底部に胼胝(たこ)を形成しており、疼痛のため歩行障害も来しています。手術をすることによって、変形は矯正され、胼胝(べんち)も消失し、疼痛がなくなり、歩行が楽になります。

    術前の足部写真(外反母趾変形及び足底に有痛性胼胝を認めます)

    術前XP(外反母趾変形)
    術直後XP(骨切りによる矯正)
    術後XP
    抜釘後XP(外反母趾矯正は良好)

    現在の足部写真(外反母趾が矯正され、足底の胼胝も消失しています)

  • 母趾MTP関節固定術

    母趾MTP関節の破壊・変形が強い場合は、母趾MTP関節の変形を矯正して、固定します。固定することによって、安定した変形の矯正と除痛効果が得られ、歩行障害が改善します。

    術前XP
    (母趾MTP関節の破壊が著明に認められます)
    術後XP
    (良好な矯正が得られます)
  • 母趾MTP関節人工関節置換術

    母趾MTP関節の障害に対しては、固定のみではなく、人工関節置換術をして、変形および機能障害の改善をさせることも可能です。人工関節置換術の場合は、母趾MTP関節の可動域の温存が期待できます。

    術前XP
    (母趾MTP関節の軟骨はほぼ消失)
    術後XP
    (人工関節置換により矯正は良好)
  • 外反母趾矯正術及び2-5趾関節形成術

    RAやRA以外でも、前足部変形が強い場合は、外反母趾矯正術に2-5趾のMTP関節形成術を合わせて行い、変形の矯正を行います。この手術によって、前足部変形が劇的に改善され、非常にきれいな足にもどります。また、変形・胼胝の消失により歩行障害も改善されます。最近では、2-5趾MTP関節の変形に関しては、関節の破壊がすでにあったとしても、中足骨短縮させることで関節を温存しながら、変形を矯正することも可能です。

    術前XP
    (著明な前足部変形があり、足底には有痛性胼胝もあります。)
    術後XP
    (前足部の矯正は良好で、足底の有痛性胼胝も消失し、歩行障害が改善しています。)

後足部変形及び関節障害

  • 関節鏡下距腿関節固定術

    RAや変形性関節症(OA)による距腿関節の障害は関節可動域制限や疼痛のため歩行障害を来してしまいます。こういった障害に対し、距腿関節固定術をすることで変形が矯正されるだけでなく、疼痛も改善することから、歩行が劇的に楽になります。また、距腿関節を固定しても、距骨下関節以遠の関節があるため、足関節の可動域が全く消失することはありません。

    術前XP
    (距腿関節の関節裂隙の狭小化及び変形が認められ、歩行障害があります)

    術後XP
    (変形は矯正され、固定することで疼痛は改善し、歩行が楽になります)

  • 全人工足関節置換術

    距腿関節の変形が著明でなければ、全人工足関節置換術をすることで、変形や疼痛を改善させ、距腿関節固定術よりもさらに足関節の可動域を温存することが可能です。

    術前XP
    (変形は強くありませんが、距腿関節の関節裂隙はほぼ消失しており疼痛が強い状態です)

    術後XP
    (人工関節に置換することで、疼痛は改善し、歩行が楽になります。足関節の可動域も温存されます)

  • 距骨下関節固定術

    RAやOAによって距骨下関節の変形が生じ、歩行障害を来した場合には、変形を矯正し距骨下関節を固定することによって、歩行障害を改善させることが可能です。

    術前XP
    (距骨下関節の変形がみられ、歩行障害が強い状態です)

    術後XP
    (距骨下関節の固定と,距舟関節の固定を行い,歩行障害は改善しました)

  • 全人工足関節置換術及び人工距骨置換術の併用

    距腿関節の障害及び距骨壊死などによる距骨自体にも問題がある場合には、全人工足関節置換術に人工距骨置換術を併用する手術方法もあり、これによって形態的・機能的により正常な足関節に近づけることが可能であり、疼痛・歩行障害の改善が可能となります。

    術前XP
    (距腿関節の関節裂隙(かんせつれつげき)狭小化及び変形を認め、また距骨自体に軽度の圧潰を認め、MRIでは距骨内全体に異常信号を認め、距骨壊死を来している状態でした。この場合、人工足関節置換術のみ、もしくはそれに距骨下関節固定を併用しても、今後距骨の圧潰が進行してしまう可能性が高くなります)

    術後XP
    (人工足関節置換術に術前にオーダーメイドで作製したセラミック製の人工距骨置換を併用することで、足関節の疼痛・歩行障害を改善させ、今後距骨自体の圧潰の進行を防止することが可能です)

  • 足関節固定術

    距腿関節及び距骨下関節の変形が著明であれば、髄内釘による足関節固定術によって、変形を矯正し、疼痛・歩行障害を改善させる方法もあります。

    術前XP
    (距腿関節及び距骨下関節の関節裂隙はほぼ消失しており、著明な変形をきたしています)

    術後XP
    (足関節の変形を矯正し、髄内釘によって固定することで、疼痛・歩行障害を改善させることが可能です)

  • 人工距骨関節置換術

    距骨壊死などによる距骨圧潰など距骨のみの変形で、関節は比較的温存されている場合には、事前にオーダーメイドで正常な形の距骨をセラミックで作製し(反対側の正常な距骨をベースに、個々に合わせた人工距骨を作製します)、人工距骨に入れ替える手術方法もあります。

    これによって、距骨の変形および疼痛を改善させるのみではなく、今後生じるであろう足関節の破壊・変形の進行を防止することが可能となります。

    術前XP及びMRI
    (距骨に軽度の圧潰を認め、MRIで距骨内に限局する異常信号を認め、距骨壊死をきたしていることが分かります)

    術後XP
    (セラミック製の正常な形の人工距骨に置換しています。距腿関節及び距骨下関節の関節は変形することなく温存されています)

スタッフ

  • 岡野 匡志Tadashi Okano
    専門分野リウマチ、足の外科
    2004年 大阪市立大学医学部卒業
    2013年 Clinica Reumatologica, Universita Politecnica delle Marche, Ancona, Italy
    2015年 大阪市立大学大学院 整形外科 病院講師
    2023年 高齢者運動器変性疾患制御寄附講座 特任教授
  • 山田 祐太郎Yutaro Yamada
    専門分野リウマチ、足の外科
    2010年 神戸大学医学部卒業
    2023年 大阪公立大学大学院 整形外科 病院講師
    2025年 高齢者運動器変性疾患制御寄附講座 特任講師